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【社会】違法残業、パワハラ、暴言… ブラック企業ご用心

2012/11/13

早期離職対策 厚労省、学生に説明会

 残業代を払わない、長時間労働を恒常的に求める、暴言やパワハラを繰り返す…。違法で劣悪な労働を強いて、従わないと退職を迫る“ブラック企業”の存在が問題になっている。「大手企業や有名企業にも多い」との指摘もあり、若者の早期離職の一因とされる。大学3年生の就職活動が12月1日に本格的にスタートするのを前に、厚生労働省も対策に乗り出した。

 「うちは実力主義。頑張れば給料はガンガン上がるよ」。昨年夏、都内のビルの一室であった採用面接。IT企業の男性役員が東京都の女性(25)に語り掛けた。

 昨春に大学を卒業した女性は、初任給25万円という破格の待遇にひかれて入社を決めた。「『はい』以外の返事は禁止」「見ているとイライラする」「辞めちまえ!」。入社初日から、あぜんとするような言葉を次々にぶつけられた。容姿についての暴言もあった。

 給料には月100時間分の残業代が含まれていたことが後から分かった。実際には100時間を上回る残業が続いた。

 間もなく睡眠障害になり、昨年12月にはうつ病と診断された。会社を辞めたが、今でも当時を思い出すと苦しくなる。女性は「まさか自分がブラック企業に入るとは」と沈んだ表情で振り返る。

 「ブラック企業」や「ブラック会社」との言葉は2008年に書籍「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」が出版され、09年に映画化もされ広がった。

 若者の労働相談に応じるNPO法人「POSSE(ポッセ)」では、相談の3割以上が長時間の残業や残業代の不払い、厳しいノルマといったブラック企業に関する内容。「うつ病になり退職届を出したが上司に捨てられた」(23歳男性)との相談も。

 上司に従わなかったり「使えない」と見なされたりすると激しい嫌がらせを受け、自主的な退職に追い込まれるケースも多いという。

◆見分ける力

 「教育・学習支援」(塾講師や私立小中学校教諭など)48・8%、「宿泊・飲食サービス」48・5%、「生活関連サービス・娯楽」(美容院やパチンコ店など)45・0%…。

 厚労省は10月末、入社してから3年以内に仕事を辞めた人の業種別割合を初めて公表した。

 3年以内の離職率は大卒の全体で3割前後。厚労省の担当者は「各業種の離職率を知ることで、学生に『こんなはずじゃなかった』という不本意な離職を避けてもらいたい」として、公表には「ブラック企業対策」の意味合いがあることを打ち明ける。

 厚労省は就職後のトラブルや早期離職を未然に防ぐため、労働法制の基本知識に関する説明会も9月から全国各地の大学で開催している。

沖縄国際大学で労働法制などについて講義する厚労省職員=10月(厚労省提供)
沖縄国際大学で労働法制などについて講義する厚労省職員=10月(厚労省提供)