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天職ですか/「ベストの答え」出す ホテルのコンシェルジュ

2012/10/12

阿部佳さん(52)

 宿泊客の6、7割が外国人のホテル「グランドハイアット東京」(東京・六本木)。早朝から各国のビジネスマンが行き交うフロントで、チーフコンシェルジュの阿部さんは笑顔で接客する。

 1日に寄せられる客の要望は200~300件。中には「母国で知り合った日本人の知人を捜して」など時間のかかるものもあるが、「駅までの道案内やレストランの紹介など、簡単そうな要望ほど難しい」と阿部さん。

 客が何度も来日しているビジネスマンなのか、東京が初めての高齢女性か、などで案内する道順は違う。その人の好みや懐具合、疲れ具合、天候などによって「おいしい」と思うレストランも違う。「そのお客さまにとって、いかにベストの答えを出すか。家族や恋人に思う気持ちをお客さまにも常に持ち続けなければ、ただの情報係、手配係に終わる」

 中学時代、家族で行った欧州旅行でコンシェルジュを知った。自分や家族の気分にぴったりの観光地や飲食店を手配する姿を見て、「なぜ人の気持ちが分かるのだろう」と興味を持った。だが、阿部さんが大学を卒業した当時、日本にコンシェルジュがいるホテルはほとんどなかった。流通、教育業界で8年間働き、1992年1月に外資系ホテルに転職。憧れのコンシェルジュとなった。客の要望解決に必要なネットワークづくりなどに力を入れ、97年にはパリにあるコンシェルジュの世界的組織の正会員に選ばれた。厳しい条件があり、今でも日本人会員は23人しかいない。2000年には日本ホスピタリティ推進協会のベスト・オブ・ザ・イヤーに輝き、02年、ハイアットに移った。

 最近はコンシェルジュ希望の学生が増えたという。「法的、道徳的に問題がなければ、お客さまの要望は何でも受ける仕事。いろんな物に興味があり、何でも楽しむ力があるかどうかが大事です」と笑った。

文 ・砂本紅年
写真・淡路久喜

笑顔で電話応対するグランドハイアット東京チーフコンシェルジュの阿部佳さん=東京・六本木で
笑顔で電話応対するグランドハイアット東京チーフコンシェルジュの阿部佳さん=東京・六本木で