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【暮らし】<はたらく>銀行や自動車ディーラー 「女子力」高め業績アップ

2012/10/12

 少子高齢化が進み、以前ほど経済成長が見込めなくなる中、「女子力」を高めて営業戦力を強化したり、女性の意見をサービス向上につなげたりする企業が出てきた。潜在的な労働力の活用だけでなく、商品やサービスで新たな価値を生み出すためにも、女性の登用が鍵になってきているようだ。 (稲田雅文、稲熊美樹)

 10月上旬、岐阜市の長良川河畔にある十六銀行(本店・岐阜市)の「じゅうろく長良川保養所」。調理室で女性行員6人が、ロールキャベツやサラダなどの作り方を講師から学んでいた。

 料理教室は「女子力アップ」を目指す同銀行の人材育成の取り組みの一環で、8月から始めた。窓口に訪れる顧客の大半は女性であることから、サービスの強化には業務に関する知識だけでなく、幅広い教養も含めた女性行員の「女子力」が重要だと考えた。

 料理教室のほか、ヨガ教室とパン教室も並行して開講しており、約70人が学ぶ。開講に合わせて、調理室を新設するなど、保養所を全面改装した。参加しやすいよう月1度、土曜日にしたこともあり、抽選になるほどの人気ぶりだ。

 同銀行羽島支店で接客を担当する高見麻理奈さん(28)は「接客では世間話もすることが、ニーズを探る上でとても大切。主婦の顧客なら“料理教室で学んでいます”と話すと、料理について教えてもらえることも。共通の話題に最適です」と話す。

 東海地方の有力地銀である十六銀行は、2009年10月に顧客満足度向上を目指すチーム「JUICES(ジュース)」を結成。女性の視点や感性を生かした接客への気配りや身だしなみの改善などを通じ、より良いサービスの提供を目指すとともに、女性行員のモチベーションの向上も狙う。顧客への対応の仕方を記した事例集の発行や、親子に金融を知ってもらう体験イベントの開催など、幅広い分野で活動している。

 堀江博海頭取は「銀行の業務領域は拡大しており、女性の携わる業務も増えている。そこで、女性特有の潜在能力を発揮してもらいたい。職場環境をもっと良くし、活躍してもらいたいと考えている」と語る。

 トヨタ自動車系ディーラーの「ネッツトヨタ名古屋」(名古屋市)では「オシャレで格好よく女性プロジェクト」を七月に発足させた。全女性スタッフを対象にマナー講習を実施するなど、女性の目線をいかした店舗づくりを進めている。

 店には1人で来店する女性や、夫婦で車を一台ずつ所有するケースも。修理の間、女性1人でもリラックスして待ってもらえる空間にしようと、女性専用の待合室をつくった店舗もある。担当者は「トヨタ系のディーラーであれば、同じ車が買える。だからこそ、いろいろな付加価値をつけたり、口コミを期待したりするなど、女性の目線は欠かせない」と話す。

 経済産業省の「企業活力とダイバーシティ(人材多様化)推進に関する研究会」が今年2月にまとめた報告書は、少子高齢化により縮小する国内市場では、女性顧客をターゲットに潜在需要を掘り起こすことが重要であるとともに、良質な潜在労働力としても、女性が「わが国最大の人材フロンティア」と指摘。ダイバーシティ推進の考え方を取り入れている企業は、企業利益も向上する傾向があるとした。

 その壁になっているのが、日本企業の雇用慣行だ。報告書では、性別で役割を分担する意識が根強いことや、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が欠如していることなどから、出産などに直面した女性の就業継続が困難になっていると指摘。「トップの強いリーダーシップの下で、経営戦略として女性の活躍推進に取り組むことが必要」としている。

「女子力」アップに向けて、講師(右)から料理を学ぶ女性行員たち=岐阜市で
「女子力」アップに向けて、講師(右)から料理を学ぶ女性行員たち=岐阜市で