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【暮らし】<はたらく>仕事を点数換算 職務評価 導入目指せ 「同一価値労働同一賃金」へ

2012/09/07

 日本の賃金制度では、同等の仕事をしているのに、男女や正規と非正規など、性別や雇用形態の違いで賃金に大きな差がある。不当な賃金差別を改めようと「同一価値労働同一賃金」の実現を目指す団体が、公正な賃金の決定に欠かせない「職務評価」の手法を実践する体験会を開いている。記者が体験会に参加し、その手法を学んだ。 (田辺利奈)

 8月下旬、市民団体「均等待遇アクション21」(東京都)が埼玉県内で開いたワークショップ。全国から自治体の男女共同参画担当者やNPO関係者ら27人が参加した。女性の割合が高いため、賃金が低くなりがちな保育士を題材に手法を学んだ。

 職務評価は、仕事に求められる知識や技能、肉体・精神的な負担などを細かく評価。最終的には点数で価値を表し、平等な賃金の算出につなげる。この日は同一価値労働同一賃金を推進する「ペイ・エクイティ・コンサルティング・オフィス」(PECO、東京都)が国際基準を基に策定した評価方法に従って、作業を進めた。

 6~7人の班に分かれ、まずは保育士が保育所で担当する職務を挙げた。記者の班では、議論の結果「子どもの安全確保」「発達に応じた活動支援」「日誌記入などの事務作業」が挙がった。それぞれの職務について、「知識・技能」「負担」「責任」「労働環境」の4要素に分解し、それぞれをさらに細かく点数化=図表参照。千点満点の合計点で仕事の価値を計る。重要なのが、通常は評価されない“気配り”といった「感情労働」も評価することだ。

 時間の制約もあり、職務のうち「子どもの安全確保」だけを点数化した。「対人責任」「コミュニケーション技能」「問題解決力」などが高い得点となった半面、「労働環境の不快さ」「仕事の手際や機器の操作などの技能」などは低い得点に。最終的に825点という評価になった。

 他の班も800点を超えたところが多く、参加者からは「保育士さんには、こんなにたくさん仕事があったのね」「親の対応も大変なはず」との声も。他の仕事での平均は650~700点で、保育士の感情労働も含めた仕事の幅広さや負担を再認識したことで、高い評価になった。

 非常に手間と時間のかかる作業だが、他の業種との客観的な比較も可能になる。参加したNPO法人「男女共同参画フォーラムしずおか」(静岡市)の谷口年江理事(52)は「職員の給料を決める身として、期限雇用の人にこそ職務に応じて払うべきだと思う。参考にしたい」と話した。

     ◇

 日本は、同一価値労働同一賃金を定めた国際労働機関(ILO)100号条約を批准している。しかし、賃金差別が解消されていないとして、ILOから昨年、違反勧告が出された。2011年版の男女共同参画白書によると、10年の給与は、一般労働の男性に比べ、一般労働の女性は69・3%しかない。短時間労働の男性で54・7%、短時間労働の女性では49・5%にとどまる。

 条約の実効性確保のため、政府が10年に閣議決定した第3次男女共同参画計画には「職務評価手法等の研究開発を進める」と盛り込まれた。PECOの屋嘉比(やかび)ふみ子代表(63)は「職務評価は今後避けて通れない。会社と裁判になったときには証拠としても通用する。数字で仕事の価値が見え、自信にもなる」と話す。

 PECOが職務評価の方法を解説したDVD「ジェンダー平等社会をめざして やってみよう!職務評価」は、1部1000円で販売している。付属の冊子には実践用ワークシートも。購入申し込みは均等待遇アクション21=電03(5689)2320=へ。