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【暮らし】求人サイト「日本仕事百貨」 ユニークな仕事ばかり紹介

2012/08/31

 離島の自然ガイドに衣装デザイナーのマネジャー、薬膳料理店の店長候補…。こんなユニークな仕事ばかりを集めた求人サイト「日本仕事百貨」がある。求人内容も、給与や勤務地といった条件より、その職場の雰囲気や働く人の思いを中心に伝える。コンセプトは「生きるように働く人の仕事探し」だ。 (発知恵理子)

 求人サイト「日本仕事百貨」を運営するのは、「シゴトヒト」(東京都港区)社長の中村健太さん(33)。八月下旬の昼下がり、中村さんはTシャツに短パン、素足にひものない靴という姿で、東京都練馬区の光が丘動物病院を訪れた。動物看護師の求人依頼を受けたためで、院長や看護師らに3
時間近く話を聞いた。

 同院は、獣医師系の大学や専門学校、業界紙などに求人を出してきた。採用担当の鈴木建二管理部長は「動物嫌いでもいいから、人好きで長期間働く良い人材がほしい。今までとは募集方法が全く違うので、出会えるのではと思った」と話す。

 求人を掲載する際、中村さんは必ずその仕事現場に赴き、取材をする。「入社後にギャップを感じて辞めてしまわないように、普段の職場の空気感や、本音をつかむことを大切にしている」。仕事のやりがいだけでなく、楽しさや厳しさなどありのままを載せる。それが、人材のマッチングにつながるという。

 中村さんがこの仕事を始めたのは4年前。以前は大学で学んだ建築を生かし、不動産会社で働いていた。だが、仕事で悩む日々が続き、連日バーに通った。そこで、働く人が生き生きしていると居心地の良い空間がつくられることに気付く。「人と場所を結び付ける仕事をしよう」と、日本仕事百貨を生み出した。

 掲載する求人は、農家の研修生やNGOスタッフ、町工場の職人、葬祭ディレクターと、職種だけでなく、雇用形態もさまざまだ。そこに、新卒や中途、年功序列や終身雇用といった価値観はない。ネットや口コミで広がり、全国の会社や自治体、NPOや海外からも求人依頼がある。「自分たちの思いに共感してもらえる人を探している会社が多い」と中村さん。

 1件当たりの採用は1人から数人と少ない。中村さんは「既存の求人では埋もれてしまうが、誰かが探していて、誰でもよいわけではない仕事」と言う。これまで扱った求人は300件以上。応募者は、「ロストジェネレーション」(就職難世代)といわれる20代後半から30代に多いという。

 PR会社バウム(東京都渋谷区)で働く吉本淳さん(29)は、このサイトを通じて就職した1人。漠然と転職したい気持ちを抱えながら求人を見た瞬間、「ここで働きたい」と直感で応募した。「会社のストーリーが伝わり、入社後の働き方が見えてワクワクした」と吉本さん。「まるで友達に『この人たちと働いてみたら?』と教えてもらっている感じ」。以前より収入は減ったが、仕事は楽しいという。

 サイトに掲げたコンセプト「生きるように働く」について、中村さんは「仕事がお金を稼ぐためだけの手段ではなく、自分の内側にある、やりたいことに向かっていくこと」と話す。「閉塞(へいそく)感のある時代に、いろんな働き方、生き方があると知ってほしい」。だからこその、「仕事百貨」なのだろう。

 サイトは「日本仕事百貨」で検索。

求人をサイトに掲載するため、動物看護師らに仕事内容などを聞く中村健太さん(右)=東京都練馬区の光が丘動物病院で
求人をサイトに掲載するため、動物看護師らに仕事内容などを聞く中村健太さん(右)=東京都練馬区の光が丘動物病院で