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【くらし】林業女子芽吹き中 岐阜、京都などでグループ

2012/08/20

森の魅力知って
間伐体験や情報誌で発信

 就業者が減り、高齢化してきた日本の林業に新風が吹いている。京都、岐阜など全国各地で「林業女子会」が結成され、若い女性が〝女子〟目線で地元の林業情報を発信し始めた。作業の体験会やフリーペーパー発行などを通じ「林業の楽しく、おしゃれなところを伝え、木のある暮らしを発信したい」という。 (吉田瑠里)

 標高900メートルほどの岐阜県美濃市のヒノキと杉の山林で7月、「林業女子会@岐阜」の間伐体験会が開かれた。

 作業着姿の女性5人が木立の中を進む。寺田奈穂子(なおこ)さん(35)が、おんぶしてきた1歳8カ月の長男を仲間に託し、するすると木に登りロープを張った。倒す方向を調整するためだ。「始めます」。服部早希さんがチェーンソーで木を切る。倒れた瞬間、歓声が上がる。ヒノキの香りがふわっと漂った。

 同市在住の寺田さんは、長野県の森林組合で作業職員として働いた経験がある。今は森林を整備するNPO非常勤職員で、未経験の会員を手助けする。「チェーンソーも軽いものが出てきた。力のない女性でも木を切る方法はある」と話す。

 会は昨年8月に発足。女性や親子向けの伐採、下草刈り、まき割りの体験会などを企画する。15人の会員は20代が中心で、会社員や学生などと幅広い。

 代表の河合美希さん(20)は、林業後継者を育成する2年制の学校「岐阜県立森林文化アカデミー」(美濃市)を今春卒業し、岐阜県内の森林組合に就職した。「林業に就く女性は少ないが、女性の目線で森の魅力や、木が暮らしにつながっていることを伝えたい」と熱を込める。寺田さんは「林業は重労働だから女性ではできない、と自身で決めつけないで」と訴える。

     ◇

 岐阜、静岡、東京、栃木など全国で産声を上げた林業女子会。その先駆けである「林業女子会@京都」は2010年7月、京都大や京都府立大の学生らが結成した。

 「楽しみながら、林業が身近なことに気付いてほしい」とフリーペーパーを発行している。内容は、林業男子と山仕事をしながら恋愛する物語仕立てのすごろく、すてきな木の小物の紹介、間伐を体験できるサークルの紹介-など。「林業に関心を持ってもらう窓口的な感じ」と、代表で京都大4年の山北絵美さん(21)。

 隔月開く林業カフェは、「お茶を飲むような気軽さで、女の子に京都の街で林業を知ってほしい」との思いから。7月下旬には街中のカフェで、竹細工でのアクセサリー作りを体験した。

 京都府の林業部門の職員(24)が「一人で山に入ったら、イノシシが掘り返した跡が多くて怖かった」と体験を披露したり、お互いの浴衣を褒めながら「今度草木染やろうか」と提案が出たりするなど、おしゃべりに花が咲く。

 森あかねさん(24)は入会がきっかけで、介護ヘルパーから森林バイオマスを普及する会社に転職した。「自分の地元が林業で頑張っているところと気付いた」という。

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 2010年の国勢調査によると、林業就労者のうち女性は13%。林業女子会の活動は昨年の林業白書に取り上げられ、「林業女子会@京都」のフリーペーパーは、全国林業改良普及協会の主催の林業関係広報コンクールで昨年度、最優秀賞を受賞するなど、林業界からも注目されている。

 40都道府県の女性林業技術職員からなるネットワーク「LN21」の須賀由紀子代表(25)は「林業女子会は地元で、林業と関係ない職業の人でも参加しやすい情報発信をしており、林業を知る第一歩のところを担ってくれている。たまにコラボして刺激し合っていきたい」と応援する。

間伐体験でチェーンソーの使い方を学ぶ女性たち=岐阜県美濃市で
間伐体験でチェーンソーの使い方を学ぶ女性たち=岐阜県美濃市で
「林業女子会@京都」が発行しているフリーペーパー
「林業女子会@京都」が発行しているフリーペーパー