2012/08/17
中小生き残りへ支援
豊田自動織機グループのサンスタッフ(愛知県刈谷市)が中小企業を対象に、4月から始めた指導員の派遣事業が好調だ。ものづくりの経験を積んだ豊田織機OBの指導員は派遣先の工場内を定期的に訪れ、改善ノウハウを伝授している。これまで15社を指導し、新たに5社からも引き合いがきている。
パイプ類の溶接などを手掛けるカンドリ工業逆川工場(愛知県幸田町)。サンスタッフ指導員の松井正敏さん(62)は、材料や部品の保管倉庫をチェックした後、ラインリーダーの渡辺資芳さん(51)に声をかけた。「入り口に材料の管理ボードを置いたらどうか」
倉庫内の棚は多品種の材料が細かく仕分けられ、実際に棚まで行ってみないと、どこに何があるか分からない状況だった。松井さんは「誰でもすぐ、目的の材料を見つけられるような『標準化』が必要」と説いた。
カンドリ工業の売上高は17億円。リーマン・ショック後も売り上げを維持しているものの、神取勇社長は取引先から「海外の企業に発注すれば、おたくよりも2~3割は安くできる」と言われることが多く、危機感を持っているという。
生産コストの削減を目指し、不良品率のグラフなどデータを取り始めた。座学の講習に従業員を派遣したこともあったが、「話を聞いただけでは何も残らない」と神取社長。サンスタッフに指導を依頼した。
派遣されてきた松井さんは、豊田織機で自動車組み立ての長草工場(愛知県大府市)に40年近く勤めるなど現場一筋で、定年退職後に指導員に就いた。1回4時間5万円の指導を月2回、1年間続ける。「自分で問題点を見つけ、解決できる風土をつくりたい」と意欲を見せる。
自動車産業の改善ノウハウは、自動車以外のメーカーにも応用できるため期待が高く、トヨタ自動車やアイシン精機(愛知県刈谷市)のグループ企業も同様の指導事業を手掛けている。織機OBの指導員5人を抱えるサンスタッフの場合、特に海外進出をせずに国内で生き残りを図る中小企業に狙いを絞って指導している。(渥美龍太)
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