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【暮らし】<はたらく>イクメンは職場が育てる 育休促進へ 利用者、全国では少数

2012/07/27

 男性が育児に積極的に関わる「イクメン」という言葉が浸透し、育児休業を取る男性も増えてきた。ただ、全体ではまだ少数派。制度はあっても使われていないという会社も多い。職場の環境づくりが求められている。 (砂本紅年)

 「フーって、吹いてごらん」。東京都世田谷区の住宅街。ネット検索大手のグーグル(港区)プロダクトマネージャーの鈴木宏輔さん(37)が、3人の子どもたちとしゃぼん玉遊びをしていた。妻の円(まどか)さん(38)は「みんなパパが大好きね」と笑う。

 鈴木さんは2年前、3人目の誕生で3週間休職した。帝王切開で入院した円さんに代わり、残された2人の幼稚園や習いごとの送り迎え、食事の買い出しなどをした。「面白かったが、子育ては休みなし。正直、仕事の方が楽」と苦笑する。

 同社には、子どもが生まれて90日以内に父親が4週間有給で休む「パタニティ休暇」があり、対象となった男性社員のほとんどが1カ月フルに休む。「使われない制度は意味がない。会社としても、社員がいろいろな視点や経験を身に付けることが製品やサービスに生かされると考えている」と広報部マネージャーの河野あや子さん。会社に子連れで来る日もあるほか、保育園のお迎えのため、フレックス勤務で午後5時に帰宅する男性社員も複数いるという。

 鈴木さんも「主夫」経験を料理レシピ検索の開発などに生かした。「子どもとの時間にあらためて価値を感じるようになり、なるべく子どもといるようになった」と、イクメン度の進化も実感している。

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 全国的に見れば男性の育休取得者はまだ珍しい。厚生労働省によると、男性の約3割が育休を取りたいと考えている一方、実際の育休取得率は2011年度2・63%(前年比1・25ポイント増)。このうち数週間以上の長期休業を取っている人はさらに少ないとみられる。

 厚労省育児・介護休業推進室の担当者は「職場に前例がないと言いだしづらいようで、なかなか最初の1人が出ないと聞く」と話す。まずは前例をつくるべく、職場の環境づくりから進めている会社が多いようだ。

 赤レンガの東京駅が見える日本生命の丸の内ビルの会議室。20、30代の同社社員23人が、4、5人ずつグループで弁当やパンを食べながら、子育てについて話していた。

 昨年から月に1回程度開いている社内の「パパママランチ交流会」。多くが初参加で、同じ会社でも初めて会話する人ばかり。この日は男性が多く、14人。「土日は家でゴロゴロ」というパパ社員も「やはり休日は子どもと外に出るのが1番なんですね」などと納得した様子だった。

 同社では、1、2日の短期で男性が育休を取ることはあっても、数週間など本格的に休んだ人は今のところいないという。「たわいもないことを積み重ねることで、まずは会社の雰囲気づくりをしていきたい」と同社人事部の柘植(つげ)あや子さん。

 森永乳業は昨年4月から1年間、社内外でイクメンプロジェクトを展開。パパ向け育児情報を発信したり、ママの気持ちなどを考える「パパのための育児講座」を開いたりした。09年度に1人だった男性育休取得者は昨年度は5人に。4、5日間または2週間か1カ月間休んだといい、広報課では「活動を通して、抵抗感が少なくなっているようだ」と話す。

 全日空の地上職で男性初の育休を今年1月末まで11カ月取った福井聡さん(32)は「半年前から会社と交渉した。早い段階で関係者に話しておくことが大事」とアドバイスしている。

<メモ> 2010年6月末に施行された改正育児・介護休業法には、父親が育休を取りやすくする制度が盛り込まれた。▽母親が専業主婦や育休中でも父親が育休を取れるように▽母親だけでなく父親も育休を取る場合、休業可能期間が2カ月延びて1歳2カ月までに-など。

 厚労省は男性の育休取得率を17年度に10%、20年度には13%に上げることを目標に掲げ、イクメン実践中の個人や企業の取り組みを紹介するなど「イクメンプロジェクト」を展開中だ。一方、男性による子の看護休暇取得率は育休ほど伸びず、短時間勤務の比率は下がっているのが現状という。

子どもたちと遊ぶ鈴木宏輔さんと妻の円さん=東京都世田谷区で
子どもたちと遊ぶ鈴木宏輔さんと妻の円さん=東京都世田谷区で