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【岐阜】あしたを担う/街を彩る光と陰の美

2012/07/15

本郷 和代さん(27)=高山市
チョークアートアーティスト

 専用の黒板に鮮やかなオイルパステルのチョークで色を重ね、指で混ぜてさまざまな色を作っていく。自然なグラデーションで光と陰が表現された果物やお菓子は、黒板の中から浮き出てきそうな立体感を帯びている。「指で混ぜることで温かみもあるし、一つ一つの表情が変わるのがチョークのいいところ」と魅力を語る。

 高山市初田町に市内で唯一のチョークアートショップ「Atelier ange」を開いて2カ月。これまでに飲食店や雑貨屋など市内3店舗の看板やメニューボード、ウェルカムボードを手掛けた。学校で使ういわゆる「チョーク」とは似つかないポップな色とデザインが目をひき、新たに2件の予約も入っている。

 高校卒業後、19歳で結婚し、専業主婦として過ごしてきた。昼夜を問わず働く夫を見て、「万が一、夫が病気にでもなったら何ができるだろう」と思い、いくつかの資格に挑戦したが、子育てとの両立がうまくできず、長続きしなかった。

 「何か自信を持てるものがほしい」。そう思って夫に相談した。答えは「何でも好きなことをやってみて、それが自信になったときに仕事になればいいんじゃないかな」。好きな飲食関係を仕事にしている夫の言葉がすごく心に残った。

 一昨年の冬に、テレビで見たチョークアートに興味を持った。もともと絵を描くのが好き。すぐに独学で始め、昨年6月から今年3月まで月に2回、東京で日本のモニークチョークアート第一人者の指導を受けた。

 作品はすべてオーダーメード。どんな作品にするかはとことん話し合う。話すだけでは把握しきれない店の雰囲気や客層をつかもうと、時には半日近くを客の店で過ごすことも。お客さんと自分の気持ちにこだわるためだ。「作品にお客さんの表情が出て、自分にはない世界観を描けるから」。

 「高山の街を少しでも華やかにできたら」と話す。いろんな店のニーズに応えられるよう、最近はひらめきを絵画にしてアイデアを膨らまし、自分の引き出しを増やしている。ポップでカラフルなもの以外に、高山の雰囲気に合う技法にも挑戦するつもりだ。

 「高山には頑張っている若い人たちがいっぱいいると思う。チョークアートでその人たちのお店のお手伝いができれば、私の自信にもなる」。好きなものに納得いくまで打ち込む。そんな迷いのない表情で語った。 (井本拓志)