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【くらし】はたらく/仕事+育児の就業体験 出産退職者は増える 選択肢に幅学生実感

2012/07/13

 国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、出産前に仕事をしている女性の割合は増えている。ただ、出産前に仕事をしていた人が、出産を機に辞める割合は逆に上昇。第1子を2005~09年に産んだ女性の場合、出産退職は全体の43・9%に上る=グラフ右。

 育児休業を取得して仕事を継続する女性の割合は、20年前の約3倍に増えた。しかし、育休を取らずに仕事を継続する人の割合が減っただけで、出産後も仕事を続ける人の割合はさほど増えていない。

 就業形態を子どもの年齢別にみると、成長するほど働く母親の割合は増えるものの、パートや派遣が中心で、正規の割合は増えていない=同左。出産を機に仕事を辞めると、再び正規で仕事をするのが難しい現状がうかがえる。

 就職活動を前にした学生にとって、仕事と子育てを両立できるかどうかは大きな不安の1つ。働く母親の支援に取り組む名古屋市の企業は、仕事と育児を両立させている女性から学ぶインターンシップ(就業体験)のプログラムを開発、学生を勇気づける取り組みを今夏から始める。先行して体験した学生を取材した。 (稲熊美樹)

 愛知県立大4年の樽田(たるた)千波さん(22)は昨年10月~今年3月、働く母親を支援するホームページ(HP)「キラきゃりママ」の運営などをする会社の経営者、大洲早生李(さおり)さん(33)=名古屋市千種区=の元に〝弟子入り〟した。週に1度、大洲さんと打ち合わせをしながら、HPに載せる記事の取材や執筆、編集の一部を担った。

 大洲さん自身が、働きながら3人の子どもを育てる母親。眠る赤ちゃんの横で、パソコンのメールで仕事先と打ち合わせをしたり、子連れで取引先に出向いたりする姿を目の当たりにし、樽田さんは「時間の使い方がうまく常に仕事や子育てを考えている」と感じた。

 「仕事は頑張りたい。でも子育てもしたい」と、就職活動を前に不安を感じたためインターンシップに応募。以前は「育児休業などの制度が整っている教師になろう」と考えていたが、体験を通じて「制度が整っていなくても、頑張ればどうにかなる」と考えるようになり、職種の選択肢が増えた。就職活動に積極的に取り組むことができ、語学力も生かしてメーカーなどに内定した。

 大洲さんが、このインターンシップを始めたのは、自身が仕事と出産で悩んだから。東京都内の大学を卒業後、大手メーカーで広報の仕事に就き、キャリアを積んでいた。しかし、結婚後も東海地方で仕事をする夫とは別居のまま。「20代で子どもを産みたい」という希望もあり選択を迫られた。

 結局、退職し、名古屋で起業したが「もっと早くから人生設計を考えていたら」と何度も感じ、学生たちに、子育てをしながら働く女性の姿を間近で見てもらう仕組みづくりを考えた。

 樽田さんの経験を基に、インターンシップのプログラムを開発。マナー講座のほか、社会人との面談や参加する学生同士の交流なども盛り込み、この夏から正式に開始する。

 6月に名古屋市で開いた説明会には、学生10人ほどが参加。男子学生も3人いた。名古屋市立大薬学部五年の堀ノ内渉さんは「男性の意識も変えないと、少子化問題は解決しない。一緒に考えたい」と話す。

 今後、学生の一部は、大洲さんの会社や社会保険労務士事務所などで3カ月以上、就労体験を重ねる予定だ。