2012/06/22
働き盛りの会社員にとっても、家族の介護が、避けて通れない課題になってきた。核家族化に加えて共働き家庭が増え、企業の支援がないと「介護離職」も避けられない。先進的な企業の取り組みと、家族の介護をしながら仕事を続ける社員を取材した。 (稲熊美樹)
コンピューターシステムなどを手掛ける日本ユニシス(東京都江東区)に勤める50代女性は2010年12月、会社員の夫(51)がくも膜下出血で倒れ、突然介護に直面した。手術などには、介護休暇を利用して付き添った。
夫は命は取り留めたものの、高次脳機能障害でじっとしていられず、記憶もできない。要介護4と判定され、常に目を離せない状態に。昨年3月の東日本大震災では、在宅勤務の制度を利用して1週間急場をしのいだ。
リハビリできる病院に転院し、退院後に備えて日中預けられる施設を探したが、年齢が若いこともあって難航。ようやく施設を見つけたが、女性が勤めている時間帯すべてをみてもらうことは難しかった。
昨年の夏休み、施設へ通所する夫の行動を観察した。朝は目を離せないが、夜は夕食と入浴を済ませると疲れて寝てしまい、夫1人でも過ごせそうなことが分かった。
そこで、フルタイムで働きながら、出退勤時間をずらせるフレックス制度を利用。出勤時間を30分遅らせ、夫の通所に対応した。会社の担当者から「辞めることは考えないで」と励まされ、他にもさまざまな制度を組み合わせることで、仕事を続けることができた。女性は「もうだめかな、と思ったこともあったが、会社側にいろいろ相談に乗ってもらい、頑張ろうと思えた」と話す。
育児・介護休業法は、介護と仕事の両立のための制度=表=を定めている。
同社には、より充実した「両立支援制度」があり、介護休暇は法定の年5日を上回る年12日。介護目的の場合は、失効した休暇も含め、最大60日まで積み立てられ、1日単位で利用できる。この2種類の休暇を年間百40~150人が利用し、男性の方が多いという。
制度を充実させた結果、育児や介護と仕事を両立させ長く勤める女性が多くなった。両立支援担当の小田村和江さんは「会社の利益も大切だが、人は制約があるのが普通。いろいろな人が働ける職場になりたい」と話す。
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国の06年度の社会生活基本調査によると、介護をしている人は50代を中心に、全国で530万人超=グラフ。うち、仕事をしながら65歳以上の家族を介護する人は228万人。64歳以下も82万人が介護している。
別の調査では、06年10月から1年間に介護で離職、転職した人は14万4800人に上る。
厚生労働省の09年度の調査では、介護期間中に離職や転職をしたきっかけは▽労働時間が長かった▽出退社時刻を自分の都合で変えられなかった▽介護休業を取得できなかった▽在宅勤務ができなかった-などが上位に挙がった。
少子高齢化で今後、ますます介護離職の問題が深刻になる時代、どんな支援が必要か-。
両立支援に取り組む会社「wiwiw」(東京)が事務局となり、東京大大学院の佐藤博樹教授らが昨年12月にまとめた提言では「介護が長期化することが多く、介護休業に加え、短時間・短日勤務制度や勤務日選択制度、さらに在宅勤務など柔軟な働き方の整備が求められる」と指摘。その前提に「長時間残業の削減など、すべての社員が意欲的に働けるよう、働き方の改革が不可欠」と訴えている。
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