2012/05/24
大手志向だった既卒者
人材確保悩む中小企業
働き場がない学卒者と、採用意欲はある中小企業-。双方を仲立ちする官民連携の就職支援事業が東海地方で定着してきた。若者の大手志向がミスマッチを生みがちだが、職場実習での出会いが互いに安心感を与えるようだ。(後藤隆行)
「良い意味で厳しく接します」。JR名古屋駅前にある高層ビルで22日、人材派遣会社の担当者が、リクルートスーツの男女に語りかけた。
愛知県が人材派遣会社に委託する「未就職卒業者向け就職支援事業」の募集説明会。午前と午後の2回に計30人が出席した。大学や高校などを卒業して3年以内で、あいさつや歩き方にぎこちなさも残る。
選考を通ると、7月からは月給14万4000円の契約社員に。ビジネスマナーや社会常識を学んだ後、民間企業で5カ月程度の実習を積む。働きぶりを認められれば、実習先に本採用される。
「基本動作から磨ける」「自分に合う仕事なのかが分かる」。応募した若者たちは期待を込めて語った。
2年目の昨年度は追加募集を含め612人が受講。就職した464人のうち、実習先での採用が七割を占めた。本年度の参加枠は計500人で、人材派遣4社がそれぞれ募集している段階だ。
「着信通知の携帯電話で育ち、見ず知らずの人と話すことが苦手」。受託会社の一つ、パソナの田村富美子東海営業本部長は、最近の若者像を指摘する。意思疎通の能力を養い、自ら動ける人づくりが研修目標という。
一方、中小企業が人材確保に悩む背景には、情報発信のノウハウに乏しく、採用コストもかけられない実情がある。実習可能とパソナに登録する企業は、幅広い業種から200社以上に上る。
ただ、業況悪化などを理由に、期間雇用や採用見送りも少なくない。愛知県の担当者は「正規雇用の意欲がより強い企業が実習を受け入れて」と求める。
未就職者支援は岐阜県や三重県なども熱心だ。国の基金交付金が原資だが、その予算措置は本年度まで。厚生労働省は「来年度も延長するかは決まっていない」という。
大学新卒の就職内定率はリーマン・ショックを経て急減し、今春になって回復。しかし、中部の主要企業では来春採用も抑制傾向が続きそうで、既卒者を含む状況は依然厳しいとの見方もある。
「在学中は大手しか意識しなかった。自分に何ができるのか確かめたい」。昨春大卒の男性(23)は住宅メーカーの営業職になじめず、今年4月に退社した。「同じように悩む人はこれからも多いと思う」と話している。
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