2012/05/23
土岐の路面表示タイル製造「ニットー」
繁華街での「路上禁煙」や自転車の「駐輪禁止」など、路面に埋め込む表示タイルの製造を手掛けるニットー(岐阜県土岐市)が順調に納入先の自治体を増やしている。東京都の3区(千代田、新宿、台東)のほか、大阪市や京都市、岐阜県高山市など19市1町がニットー製を採用し、3年前に比べて倍増した。従来の貼付式よりも高い耐久性が評価されている。 (坂田奈央)
昨年9月、東日本大震災で大津波に襲われた宮城県南三陸町を訪れたニットーの日東英成(にっとうひでなり)社長(43)。「当社の製品が役に立ったと祈りたい」。街の様子は一変していたが、町内20カ所に埋めた「津波避難経路」の表示タイルはそのまま道に残っていた。
南三陸町は2005年に津波避難の指針をまとめ、町内全域に避難経路の標識や路面標示の設置に着手。当初導入した貼付式は摩耗して表示が見えにくくなり、08年に切り替えたのがニットーのタイルだった。
震災後、ニットーは識者や研究機関とともに、迅速な避難を手助けする表示タイルについて研究を始めた。「今後、沿岸部の自治体などに津波避難経路の表示タイルを提案していきたい」と日東社長は話す。
ニットーは1964年、日東社長の父・重信氏が陶磁器用顔料メーカーとして創業。表示タイルの開発は05年、全国でいち早く路上禁煙地区を指定した東京都千代田区に提案したのがきっかけだった。千代田区は路上に貼付した表示がはがれやすいことに頭を抱えていた。
提案したのは滑りにくい特殊加工を施し、強度を高めるため1200度の高温で焼いた磁器タイル。その耐久性の高さから競合各社に差をつけ、道路や教育施設向けなど官公庁からの発注が相次いだ。
ただ、公共事業は縮小を続けており「民間向けの仕事を増やしていくことが今後課題」(日東社長)という。現在、官公庁向けと住宅など民間向けの販売比率は7対3。将来的には5対5にしようと、路面標示タイルとは別に、住宅用タイルの商品開発にも力を入れる。
民間市場は大手の住宅総合設備メーカーが攻勢を強めており、「中小メーカーが下請けに甘んじなければならない状況だが、こちらは企画力で挑む」と日東社長。レンガや瓦を扱う素材メーカー15社で連携し、デザイン性の高い庭や玄関回りの提案を開始。路面標示と住宅用の2本柱で、3年後に売上高を1・5倍に増やすのが目標だ。
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