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ゆめ人きらり/言葉の壁や病気 経験生かし力に

2012/05/20

医療通訳をコーディネート
横溝 小百合さん(24)

外国にルーツを持つ後輩に、頑張る姿を伝えたい

 病院にかかる外国人のために通訳者を派遣したりする「あいち医療通訳システム」で、患者さんや医療機関からの問い合わせに対応するコーディネート業務をしています。

 私自身がブラジルに生まれ、9歳のときに家族で来日しました。親が日本語ができなかったこともあり、私に耳の障害があると分かっても治療ができなかった。そんな経験は、今の仕事につながっているかもしれませんね。

 小牧市の小学校に編入して受けた検診で、生まれつき耳が聞こえづらいと分かりました。耳の奥の骨が固まっていて、音が伝わりにくい「耳硬化症」。手術を受ければ良くなるのですが、成人するまでずっとそのままにしていました。

 親は言葉の通じない日本で子どもに手術を受けさせることに不安があったみたいです。普通の会話はできていたし、当時は私も自分の聞こえが普通だと思っていた。

 でも大学に入って活動の範囲が広がると、聞こえづらさを感じることが増えました。アルバイト先でお客さんに呼ばれても反応できなかったり。就職活動にも支障があり、大学3年のときに手術を受けようと決めました。

 手術後は、世界が変わっていました。帰りの電車の中で、それまで聞こえていなかった周りのざわざわする音にびっくり。風にそよぐ木の葉の音に感動しました。

 お母さんは「子どものころ手術していればよかったのに、苦労させたね」と言います。

 外国人が安心して医療を受けるために、通訳はとても大事です。あいち医療通訳システムは4月に始まったばかり。もっと早くこういう仕組みがあればよかったと思うけど、定着していくように頑張りたいです。

 私が勤務する会社「ブリックス」は電話通訳などの事業をしていて、あいち医療通訳システムの運営を受託しています。日本の企業に就職して社会に貢献するのが夢だったから、昨年10月に採用が決まって本当にうれしかった。

 大学に進学できたことも、私のように外国にルーツを持つ若者の中ではまだ数少ないのが現状です。私も高校に入るころまではノートを取るのが精いっぱいで、日本語での勉強には苦労しました。

 最近、同じような経験をしてきた日系外国人の若者たちとグループをつくりました。言葉の壁で苦労する子どもたちに、こんなふうに頑張っている先輩がいるんだと伝える活動をしたい。自分たちがモデルになって、夢を与えられたらいいなと思います。 (聞き手・木下大資)

 よこみぞ・さゆり 1987年、サンパウロ生まれ。97年に来日後、親の仕事の都合で小牧市や静岡市などを転々とし、今は岩倉市在住。高校生のとき日本国籍を取得した。愛知淑徳大英文学科を卒業後、岐阜県可児市の小学校で通訳を1年間務めた。