2012/05/08
消防士に憧れ、消防署の片隅で消防車をスケッチしていた丸刈りの小学生が、たくましくなって消防本部に戻ってきた。今春、3度目の挑戦の末に三重県鈴鹿市消防本部に採用された栗須竜平さん(25)=同市岸岡町。少年時代の夢を実らせた若者を、当時を知るベテラン消防士らが感無量の表情で迎えた。
幼いころから消防車と救急車が大好きだった栗須さん。小学3、4年生のころは週末や夏休みになると1人、自転車で消防署に通った。署で待機中の車両を色鉛筆や絵の具で描き続けた。
たびたび訪れ、熱心にスケッチする小学生の姿は署員にすぐ覚えられた。消防士らが業務の合間に声を掛け、昼にラーメンをごちそうした。栗須さんは「人を救うことの意義や喜びを話してくれた。『おまえも大きくなったら消防士になれ』と言われ、うれしかった」と振り返る。
地元高校の卒業を控え、栗須さんは鈴鹿市の消防士採用試験に挑んだが失敗。陸上自衛隊で救急救命士になろうと入隊したが、別の部署に配属された。
卒業から4年後、再び消防士試験に挑んだがはね返された。さらに2年後の昨年3月、東日本大震災の救助活動を最後に自衛隊を辞め、名古屋市の専門学校で試験勉強を重ねた。3度目の正直で9・2倍の難関を突破した。
鈴鹿市中央消防署の中西貞徳署長(53)は「小柄な少年が目をくりくりさせて描く姿がかわいくて、今も鮮明に覚えている。仲間になってくれて感無量」と再会を喜ぶ。
当時のスケッチブックを自宅で保管していた栗須さんはページをめくりながら「夢がかなったことをようやく実感できた。市民の期待に応えられる消防士になりたい」と胸を張った。 (鈴鹿通信局・村瀬力)
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