2012/04/27
午前2時35分 7ヵ月の女児送り一段落
自由な運営のため無認可
働き方が多様になる中、夜に働く親たちのニーズを受け止めているのが認可外保育所だ。名古屋市の24時間保育所「ぴーかぶー」で未明まで働く保育士に密着した。 (田辺利奈)
【午後5時50分】 中心市街地に程近いビルの3階。一般的な保育所と同じ生活を送る「昼の部」の子どもを親が迎えに来る中、入れ替わりで「夜の部」の子どもたちが登園して来た。勝又裕美園長(31)が子どもたちに順次、夕飯を食べさせる。メニューは空揚げとポテトサラダ。「ご飯から食べる? お肉にする?」。1人で同時に3人に目を配る。
【6時05分】 髪をきれいに結い上げた着物姿の女性が、6歳の女児を預けると、笑顔で別れて勤め先の飲食店へ向かった。園内は乳児から小学4年生までの20人ほど。保育士3人で面倒を見る。
【6時30分】 ブロック玩具に子どもたちがワッと集まった。少し離れて見守る勝又さんは連絡帳を広げた。保護者に伝えるために、その日の子どもの様子を細かく書く。7カ月の女の子の連絡帳には「音の鳴るおもちゃがお気に入りでした」と記入した。
【7時10分】 保育士1人が帰宅し、2人態勢に。この時点で子どもは10人ほど。人数を確認し、おやつを準備する。
【7時30分】 全員でブロックを片付けておやつの時間。食べるのがゆっくりなダウン症の女の子は、せかさずに見守る。全員が食べ終えると、就寝に向け順番に歯磨き。小さい子は保育士が磨く。
【7時55分】 乳幼児のおむつ替え。部屋にずらりと布団を敷くと、子どもたちは自分たちで布団に向かった。
【8時25分】 「ママー」と泣く女の子の胸を、勝又さんがトントンと優しくたたく。しばらくすると、寝息に変わった。
【9時05分】 騒がしかった園内はようやく静かに。食器の片付けや翌日の給食の数のチェックをする。
【翌午前0時】 仕事を終えた親たちが子どもを迎えに来る。保育士は勝又さん1人に。
【1時22分】 1歳半の男の子を母親が迎えに来た。「この時間まで預かってくれるのは助かる。たくさんの子にもまれて成長してくれている」。寝ぼけ眼の息子を見てにっこり。
【1時47分】 ダウン症の女児も迎えが。「ずっと2人で暮らしてきた。ここがないと仕事ができない」と母親。
【2時35分】 最後に7カ月の女の子を迎えに来た母親。目を覚ました子どもに優しくほほ笑みかける。ベビーカーに乗せ「おやすみなさい」と帰った。
前日正午ごろ出勤し14時間以上働いた勝又さんは、やっと休息の時間。仮眠を取り午前中の勤務に備える。
◇
「ぴーかぶー」は、元看護師の古賀真琴さん(34)が2003年に設立した。自身も働く母として「子どもがいなかったときと同じ働き方を続けてほしい」と、ライフスタイルによって異なる保育時間に合わせたサービスを提供しようとの思いだった。社長を務めながら3歳と7カ月の子どもを預ける利用者でもある。
認可保育所は規制が多く、急な保育や自由な時間に給食を出すといった対応ができないため、無認可保育所として運営する。行政からの支援を受けたいとも思うが「支援を受けるよりも、自由な運営を重視しました」と古賀さん。保育士5人とボランティアで昼と夜の保育を回している。
<認可外保育所> 厚生労働省によると、2010年度で全国に7578カ所。うち午後8時以降の保育、宿泊保育、一時預かりが半数以上、のいずれかを常時運営している施設は1709カ所。1044カ所だった00年度から増加傾向にある。一方、認可された夜間保育所は06年度で69カ所で、低い水準で推移している。
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