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【愛知】臨港病院 名古屋市港区 港で働く人々を支え 患者の立場に立つ

2012/04/14

 名古屋港で働く人たちの健康を守るため、この地に建てられて66年。港湾関係者だけでなく、地域に開かれた病院を目指し、糖尿病や白内障など市民の関心が高い疾患をテーマに、年3回各科の医師が健康教室を開く。今では患者の六割が地域住民となった。

 海運会社50社でつくる名古屋港湾福利厚生協会が運営母体。24時間、365日休まない港の仕事は過酷だ。炎天下で作業を続け熱中症になったり、重機を使って大けがをしたり。貨物取扱量が日本一となった名古屋港で、働く港湾関係者を支えている。

 大きな丸いタンクが置かれた処置室がある。潜水作業で水面に浮上する時、ゆっくり上がらないと減圧症になりやすい。タンクは、高濃度の酸素を高い気圧をかけて体内に取り込む高圧酸素療法の機器だ。荒川武実院長は、「救急で運ばれる患者も多く、港とともにある病院の特徴的な治療の一つだ」と話す。

 減圧症は、窒素が気泡となって血管や体内組織に現れ、血液の流れを悪くする。関節が痛むようになり、ひどい時には死亡することもある。

 治療は、タンク内で体内の酸素濃度を通常の10~20倍に高め、酸素不足になった組織を回復させる。2・8気圧までかけることが可能で、体内の窒素の気泡を圧で小さくし、呼吸で外へ出す。突発性難聴や一酸化炭素中毒の治療にも有効だ。

 昔は漁師の治療が多かったが、最近はレジャー目的のダイバーが増えた。高圧酸素療法が受けられる医療機関は少なく、市外から来る患者もいるが、全体の患者数は減少傾向にある。

 「今後は、スポーツ選手のねんざや筋肉の損傷の治療に有効活用していきたい」と話すのは、高圧酸素療法部の高野大輔副部長。外傷には保険治療が適用されないが、体内の酸素濃度を上げることで血行が良くなり、筋肉の腫れやむくみに効果があるという。

 診療科は、内科や整形外科など10科。脳神経外科では、脳卒中の高齢患者のそしゃく機能の回復治療が間もなく導入される。糖尿病には、内臓脂肪や血圧など全身を診察し、血糖値を下げる治療が好評を得ている。

 3年前に病棟を新築。港に隣接する病院として、災害に備え2、3階に一時避難場所として使える多目的スペースを設けた。併設する健康管理センターでは、年間四千人が人間ドックや健診を受けている。地域に愛される病院を目指し、新たな分野の取り組みにも力を入れる。

  (柚木まり)

 荒川武実院長の話 医療は、地域に根を下ろさないことには成り立たない。港湾で働く人や地域住民に、患者の立場に立った質の高い医療を提供したい。人間ドックや健康診断にも、引き続き力を入れていく。

【臨港病院】 創設 1946年186床常勤医10人、非常勤医15人内科、外科、整形外科など10科名古屋市港区名港2の9の43。市営地下鉄名古屋港駅から徒歩3分電052(661)1691

減圧症のダイバーらの治療に使われる高圧酸素療法の装置=名古屋市港区の臨港病院で
減圧症のダイバーらの治療に使われる高圧酸素療法の装置=名古屋市港区の臨港病院で