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【愛知】すし職人の技、切り絵に生かす

2012/04/13

 すしの仕切りや飾りに用いる「葉蘭(はらん)切り」の技を駆使した額絵展が二十八日まで、春日井市神屋町のエコメッセ春日井で開かれている。すし職人として四十七年のキャリアがある瀬辺(せべ)忠さん(67)=同市味美町=が、伝統の技をオリジナルの切り絵へ発展させた作品で、来場者たちは「見事な出来栄え」と感心しきりだ。観覧無料。

 ファッション雑誌の表紙のように多彩な服装の女性が並んでいたり、男子ゴルフで活躍する石川遼選手の姿があったり。百点近い作品はどれも精緻で立体的。目や眉も含め、すべてが自分のすし店で使っている葉蘭を切って貼り付けた作品だ。スカートのひだは重ね貼りで表現し、ショールやバッグなど色違いの部分は枯れた葉の茶色を生かした。

 葉蘭切り自体は昔からすし職人の間で受け継がれ、江戸時代には家紋を伊勢形紙のように切り抜いて飾るサービスもあったとされる。瀬辺さんの場合、三年ほど前に「切り絵風に作ればおもしろいのでは」と思いついた。

 「最初はお客さんをイメージして女性の姿を作った。本人よりちょっと美人にしたりして…」。店に飾ったら常連客らに「よく似てる」と喜ばれ、ますます熱中するようになったそうだ。小さな作品でも一つ二時間ほどかかるが「作りかけを冷蔵庫に磁石で貼り付けておき、すしを握りながらあれこれ工夫を考えたこともある」。モチーフも妻の静子さん(65)や孫の男児ら身近な人から、水戸黄門の一場面などへと広がっている。

 「回転ずしに押されて昔ながらのすし店がどんどん減っており、葉蘭切りの技も廃れかねない状況」と危機感を抱く瀬辺さん。「こういう技で喜んでもらうのもすしの一部。仲間の間でいろいろな葉蘭切りが盛んになれば、お客さんを呼び戻す一助にもなるのでは」と話していた。

 (梅本秀基)

自信作を手に「モデルは常連客の皆さん」と笑顔を見せる瀬辺さん=春日井市神屋町のエコメッセ春日井で
自信作を手に「モデルは常連客の皆さん」と笑顔を見せる瀬辺さん=春日井市神屋町のエコメッセ春日井で