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【暮らし】<はたらく>新社会人 悩まず相談を 職場で困ったとき 対応分からない…

2012/03/23

 企業などに就職する新社会人は、4月から生活環境が大きく変わる。慣れない仕事や人間関係で悩み、体調を崩したり出社できなくなったりする人も。若手が生き生きと働くには何が大切か。職場の心の問題に取り組む産業カウンセラーの小松原智子さんにアドバイスを聞いた。 (田辺利奈)

 「困ったとき、上司や先輩にどう聞いていいか分からない」。臨床心理士でもある小松原さんの元には、こんな相談が多く寄せられる。5月の大型連休を目標に「ここまで頑張ろう」と意気込むが、休み明けに出社できなくなるパターンが多い。いわゆる五月病だ。

 会社では報告、連絡、相談が重要だが、苦手な若者が多いようだ。「質問するタイミングが分からない」「周りが何も言ってくれない」という人も=相談の例。

 腹痛や吐き気、空腹感がないなど体の不調は重要なサイン。「メールの未読が増えるのも兆候の1つ」。集中力が低下している証拠という。

 自覚症状があれば、仕事を抱え込んでいないか、孤独になっていないか、と自問してみる。「眠れない場合は薬を処方してもらうのも有効」。体調が良くなることで症状が回復することもあるという。

 社内や外部機関に相談窓口を設けている企業もあるので、調べてみるのも大切だ。小松原さんは、相談者との面談の中で、先輩への話し掛け方を予行演習することもある。必要なら問題解決の仲介もする。「悩んだら愚痴でもいいので、まず誰かに話してみて」。友人や学生時代の恩師など身近な人に聞いてもらうことも勧める。

 若者の心の問題は最近増えている。「背景にコミュニケーション形態の変化がある」と小松原さんは指摘する。携帯電話や電子メールでのやりとりが増え、直接的な触れ合いが減った。会社に入ると直接対話が必要な場面が多くなり、行き詰まってしまう。

 社会情勢の変化も原因に挙げる。会社に余裕がなくなり、若手の面倒を見られない職場が増えた。「一番弱い新入社員にしわ寄せがいく」

 自分から不調を言い出せない人もいる。上司や先輩の側も新人の様子に注意し、悩みを聞き出す努力をしたい。小松原さんは「こういう期待をしていると伝えてあげることで、仕事にやりがいが持てるのでは」と話す。

◆心の病 増加傾向

 企業にとって従業員の心の健康は重要なテーマ。社内に相談窓口を設置するなどの取り組みが広がっている。

 日本生産性本部の2008年の調査(上場2368社のうち回答269社)によると、56・1%の企業が「近年心の病は増加している」と答えている。「横ばい」は32・0%、「減少傾向」は4・5%=グラフ。

 メンタルヘルスに関する取り組みに力を入れている企業は63・9%で、02年から2倍近くに増えている。

 社内では話しづらいという人のためには、日本産業カウンセラー協会の全国各支部や各地の労災病院などでも相談を受け付けている。

 同協会は産業カウンセラー養成講座を開き、企業のメンタルヘルス担当者らに知識や技術を広めている。受講の問い合わせは、日本産業カウンセラー協会=電03(3438)4568=へ。

◆相談の例

 新入社員男性 上司に「こんなことも分からないのか」と言われた。質問に答えられるように情報集めに必死になり、実務が進まなくなってしまった。

 同 周りが忙しそうで、いつ質問したらいいのか分からない。質問すると迷惑をかける気がして、なかなか言えず行き詰まってしまった。

 入社3、4年目女性 一生懸命やっているのに、上司は何も言ってくれない。これでいいのかどうか分からなくなる。周りが認めてくれない。