2012/03/14
企業に配慮し対象縮小
民主党は13日、パートなど非正規労働者の厚生年金と健康保険の加入条件の緩和を決めた。(1)労働時間は週20時間以上(2)年収94万円以上(3)勤務先は従業員500人超(4)勤続1年以上-のすべてを満たすのが新たな条件で、学生アルバイトは除く。対象者は45万人になる見通し。2016年4月の実施を目指す。3年以内にさらに対象を拡大することを厚生年金法改正案に盛り込む。
政府は厚生年金法改正案を、消費税増税の関連法案とともに今国会に提出する。
加入条件の緩和は、収入の低い非正規労働者が厚生年金に入りやすくするのが目的。厚生労働省は当初、労働時間が正社員の「4分の3(週30時間)以上」との現行の条件を「週20時間以上」に緩和し、370万人規模の新規加入を実現することを目指した。
しかし、厚生年金の保険料の半分を負担する企業側が反発。100万人規模に縮小する案も検討されたがパートを多く雇う外食、流通業界などは納得せず、調整が難航していた。
民主党の前原誠司政調会長が14日から始まる消費税増税関連法案の党内審査前の決着を目指して収拾に乗り出し、13日の党厚生労働、経済産業の両部門会議の合同部会で一任を取り付けた。前原氏は引き続き、条件緩和に反対していた日本商工会議所などと最終調整した上で、記者会見して発表した。
民主党は厚生年金と健康保険の加入条件の緩和を決めたが、対象者は当初案より大幅に縮小された。企業側の負担増に配慮したためだ。
自公政権も2007年に同様の法案(09年に廃案)を提出したが、産業界の反対で新規加入が10万~20万人に限定され、野党だった民主党は批判した経緯がある。
民主党政権は今回の改革で、約370万人を新規加入させる方針だった。その場合、保険料の半分を支払う企業側の負担は年間約5400億円増える。
パートを多く雇う企業や商工会議所の反対を受けて、民主党の経済産業関係議員は消費税増税に加えての負担増は「企業にダブルパンチになる」と条件緩和に抵抗。加入拡大を推進する厚生労働関係議員と激しいつばぜり合いを演じた。
100万人規模などの妥協案も浮上したが、最終的に前原誠司政調会長の裁定で新規加入は45万人に縮小。企業の負担も年間約800億円増にとどまることになった。
前原氏は「企業側の負担を考え、現実的なスタートラインとして決めた。企業との話し合いを経て徐々に拡大していく」とさらなる条件緩和に意欲を示したが、見通しはまったく立っていない。
【非正規労働者の年金】 バブル崩壊以降の景気低迷でパートなどの非正規労働者が急増。現在約1700万人に上るとみられ、国民年金や国民健康保険に加入している人が少なくない。厚生労働省の試算では、月収10万円の女性が厚生年金に新たに加入すると、加入1年ごとに生涯の給付が約17万3000円(1カ月当たり約500円。27年間給付を受けると想定)ずつ増えるメリットがある。年金保険料は、独身や自営業者の妻だと年約8万4000円減る一方、サラリーマンの夫に扶養されている主婦パートは年約9万7000円の負担が新たに生じる。
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