2012/03/09
岐阜県内26カ所に生徒
そろばん教室経営 関谷 樹弘さん(44)
教壇のない教室に整然と机が並ぶ。壁際には、過去の珠算大会で生徒たちが獲得した数々の賞状やトロフィー。
関谷樹弘さんは、岐阜県笠松町の笠松本校をはじめ、県内26カ所でそろばん教室を経営する。各教室では、教師が生徒1人1人の席を回る。机を挟み、向かい側からそろばんをはじいて玉の動きを見せる。
自身も本校で毎日、生徒と向き合う。「ここには何を立てる?」などと問い掛ける。時間がかかっても、答えは教えない。「教えられたことは身につかない」と考えるからだ。生徒が自分で考え、出した答えで計算してみる。違っていたら、やり直す。
6年前には、パソコン画面に次々と映し出される数字を計算し、暗算力を鍛える「フラッシュそろばん」を導入した。「教え方は日々研究です」。生徒のいない午前中、各教室から教師が集まり、教え方を話し合う。徹底的に無駄な教え方を省くと、子どもたちはめきめき上達するようになった。
教室を開いたのは、祖父の故・樹正(じゅせい)さん。小学生のころ、一緒に入っていたお風呂で「そろばんは自分の力でできる、いい仕事だ」と聞かされた。娘である母親もおばも教室の教師を務めていた。「逃げることでもない」。優等生ではなかったが、中学生のころから自然に教室で教えるように。高校卒業後間もなく一員に加わった。
24歳のとき姉の早人子(さとこ)さんを病気で亡くし、きょうだいがいなくなった。「祖父母が元気なうちに、聞けることを聞いておこう」。マニュアルや指導書のないそろばん指導法の秘伝を体に染み込ませた。1994年に祖父が、97年に祖母が亡くなると、教室のその後が気になり始めた。
自宅近くに教室が欲しいという保護者や生徒の要望に応えたい。だが、自分や親戚だけでは限界がある-。「秘伝」といわれた指導法を血縁者以外にも伝える決断をした。
現在、全教室で75人が働く。通ってくる生徒は、幼稚園児から高校生まで計1800人。有段者は70人に上る。
「そろばんは生きていく上で武器になる」。1人1人の能力を見抜き、褒めて伸ばす指導で、計算力だけでなく、集中力や考える力も育んでいる。
文・写真 稲熊美樹
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