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【愛知】被災した職人に光を 中日ビルで東北の伝統工芸品展示即売会

2012/03/07

石巻の雄勝硯など並ぶ

 東日本大震災から1年を前に、東北地方の職人が作った伝統工芸品を紹介する展示即売会「東北の手仕事」が六日、中区の中日ビル3階で始まった。宮城県石巻市の雄勝硯(すずり)をはじめ、職人の被災で技術の存続が危ぶまれる工芸品も並ぶ。11日まで。 (竹田佳彦)

 開いたのは、青森県十和田市で東北地方の手工芸品店「ゆずりは」を経営する田中陽子さん(57)。硯や福島県浪江町で作られてきた大堀相馬焼、岩手県大槌町の刺し子など200点以上が並ぶ。「職人が誇りを持って作った物ばかり。使ってもらえば、励みになると思う」と話す。

 田中さんは昨年7月、津波被害にあった石巻市の雄勝硯生産販売協同組合を訪ね、震災がもたらした伝統工芸品への影響に衝撃を受けた。組合事務所は津波で3階まで浸水し、出荷待ちの硯4000個が流出。約10人いた職人は六人が県外に避難している。福島第一原発まで10キロしか離れていない大堀相馬焼の産地は、放射能に原料の粘土が汚染された。避難する職人からも諦めの言葉が漏れる。

 店内に並ぶ硯は、雄勝町の住民が震災後に泥の中から広い集めた。相馬焼は震災前に焼かれた。田中さんは「被災した職人が少しでも将来に光を見つける手助けになればうれしい」と話した。

 硯は1万500~1万7850円、相馬焼の食器は630~1260円。田中さんが職人から買い取り、販売している。

被災した雄勝硯を手にする田中陽子さん=中区の中日ビルで
被災した雄勝硯を手にする田中陽子さん=中区の中日ビルで