2008/11/19
記憶力と観察眼 不可欠
本。母の読み聞かせが楽しみだった幼いころから、張り込み取材のつらさを慰める娯楽として欠かせない現在まで、記者にとってすてきな友達だ。商売を体験するなら、ぜひ本屋さんで。エプロンをキュッと締め、七千冊が並ぶ岡崎市材木町の児童書店「ちいさいおうち」の店頭に立たせてもらった。
同店は、時間をかけて相談に乗る丁寧な接客が売り。やんちゃな四歳の孫のため、プレゼントを探しに来た女性に応対した。
「恐竜や動物が大好きな男の子。おとなしく座ってるのが苦手なの」。じっと見入ってもらえそうな、興味をそそる本は-。
「さっきチェックしていた一冊はどう」。迷っていると、この道十三年の店長浅井洋子さん(49)が助け舟を出してくれた。迫力ある実物大のキリンやゾウの写真が楽しめる「ほんとのおおきさ動物園」。
童心に返った記者が仕事をサボり、本を熱心に眺めてばかりだったのがすっかりばれていたらしい。とっさにお薦めすると購入してもらえた。カラーページが多く、決して安くない千五百七十五円。
本が売れて悦に入っていると、浅井さんがアドバイスをくれた。「商品を覚える記憶力と、お客さんを観察する目が大切。プレゼントの場合は、受け取る人の人生も透かし見てね」
子どもと本が好きで開店したが、経営の苦しい時期も経験した浅井さん。「すてきな本をそろえ、子どもたちをにっこり笑わせたいから」。これからも笑顔を見続けるために、日々児童書の勉強を欠かさない。(中野祐紀)
【メモ】国内の出版社は一部を除き、自動的に書店に配本し、売れ残りを返本してもらう委託配本制度を採用。ちいさいおうちは小規模専門書店のため、返本なしの買い取り契約で販売している。売り上げは1月に1000冊、100万円前後。約2割が店の利益になる。注文、販売、経理、配達の仕事があるが、本は重いため、棚整理などは意外に重労働。続けるためには「本が好き」という気持ちが一番という。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから