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ゆめ人きらり/工房造り職人の技術伝える場に 繊維産地・一宮で洋服ブランド

2012/03/04

小野 信行さん(32)
育ててもらったこの地に根を下ろしたい

 繊維産地の一宮市でカジュアル服ブランド「FRECKLE(フリークル)」を立ち上げ、この春で4年。私がデザインした図案に沿って、町工場の職人さんたちが仕立ててくれます。県外出身ですが、育ててもらったこの地に根を下ろしたい。ゆくゆくは工房を造り、ベテラン職人の技術を伝承する場にしたいと思っています。

 「シンプルでシルエットのきれいな服」がテーマで、7割が女性物。一宮市大赤見の店舗を兼ねたアトリエだけで販売していますが、情報誌で取り上げてもらう機会が増え、地元以外にも常連客ができました。

 ファッションに目覚めた高校時代、「好きな服を作りたい」と思ったのが原点。大阪のデザイン学校を卒業し、販売力を学ぶため雑貨の製造卸会社に就職。東海地方のおしゃれな小売店を回って営業しながら、独立の夢を温めていました。

 製造委託できる工場が多そうな一宮でアトリエを構えることを決め、「真っ白な所から始めたい」と、田畑の多い地域を地図で選んでたどり着いたのが、木造2階建ての古い木工所跡。大工仕事も好きなので、壁を塗ったり建具の改装も自分でやりました。

 一宮市をはじめとする尾州(びしゅう)産地は毛織物が有名ですが、縫製や裁断、ボタンの穴かがりに至るまで細かく分業した服飾業者がたくさんいます。うちのような小口にも対応してくれる業者を探すため、電話帳を見て片っ端からかけまくりました。

 延べ30社が協力してくれましたが、老夫婦だけの小規模な業者が多い。東京の有名ブランドから任されるほど技術力があるのに、不況や跡継ぎ不足で10社近くが廃業し、焦りを感じています。工房を造って新旧の職人を雇い、技術伝承の場にしたい-。その思いを伝えたら、涙を流してくれた業者もいました。

 足の不自由なお客さんに「自分に合う服を作って」と頼まれ、断った経験もあります。こうした1点物に対応するためにも工房がほしい。アトリエの隣接地に造れば買い物客に製作現場を見てもらえます。身近に職人がいる繊維産地ならではの空間になるはずです。

 現在の収益で人を雇うのは難しいけど、もう1、2店舗増やして経営を安定させ、夢を実現させたいと思っています。 (聞き手・谷悠己)

 おの・のぶゆき 1979年6月、大阪府寝屋川市出身。2008年5月、雑貨会社時代の後輩でパートナーの中村若奈さん(29)と2人でFRECKLEを設立。小野さんがデザイン、中村さんが営業と販売を手掛ける。電0586(75)4161