2012/02/03
豊橋の工作機械メーカー「西島」
定年退職制度がなく、「一生元気、一生現役」を社訓に掲げる会社がある。愛知県豊橋市の工作機械メーカー「西島」。従業員は、自らが引退を決めるまで第一線で働くことができる。工場では70歳を超えるベテラン社員が若手に交じり、熟練の技を発揮している。(矢野修平)
西島が造っているのは、自動車向けを中心にした工作機械。一機ずつの完全な受注生産だ。工作機械の心臓部にある「主軸」の組み付け作業を担当する兵藤勝哉さん(77)は昨年、勤続60年を超えた。
部品の表面を磨き、1000分の1ミリレベルの凹凸を、指に伝わる工具の感覚で調整する。兵藤さんは「愛知の名工」にも選ばれた熟練工だが「受注生産で1台ずつ違うから、毎日進化しないといけない」。
従業員136人のうち70代が7人、60代が19人で、最年長は78歳。週5日、午前8時~午後5時の定時勤務ができることが現役の条件となっている。
厚生労働省が全国の13万8000社を対象に昨年まとめた調査では、「定年なし」とする企業はわずか2・7%。珍しい人事制度だが、西島篤師社長(60)は「蓄積された技術は財産。技能伝承も、長く社内にいるほど効果がある。定年退職を強いる方がよほど非合理だ」と説く。
一方で、若手社員の登用にも工夫を凝らしている。“平社員”のベテランに支えられながら、20~30代が課長職、40~50代が部長職に就く。「パワーのある若いうちに管理職で多様な経験を積んでもらう。ベテランには進化、若手にはチャンスを与えている」と西島社長。
2008年のリーマン・ショック後、仕事量は3分の1に減少したが、リストラや雇用調整助成金の活用は一切せず、余った人員や時間を利用して約200台ある設備を改良、効率化を進めた。
その後、新興国を中心とした需要回復に着実に対応。現在は日系メーカーの中国や東南アジアなどの海外工場向けの生産でほぼフル稼働の状態だ。
西島社長は「工場は絶対に海外へは持っていかない。超円高でも、豊橋で人材を磨いて競争力を付ければ、世界から受注が取れる」と力を込めた。
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