2012/01/11
清掃会社経営 森永眞喜子さん(63)
「現場でも働く社長」に
少女のころに描いた経営者という夢を、30年かけて実現した。清掃会社M&Mサービス(東京都北区王子)社長の森永眞喜子さん。ビルの定期清掃や引っ越し後のハウスクリーニング、家事代行の掃除などが主な業務だ。
今春、会社設立から15年目を迎える。従業員は10人、年商3千万円。創業期の苦労を乗り越え、経営も落ち着いてきた。「お客さんに恵まれて、ここまで来られた。でも社長って格好良くないのよね。いろいろと気を使うし」と苦笑いする。
香川県出身。父は大手企業の社員だったが、働き者の母は畑で米や野菜を作り、さらに養鶏場も営んでいた。女一人で事業を興した姿に影響を受けながらも「家の中で母の評価は1番低かった。単に働くだけじゃ駄目で、知識が必要だと感じました」。
母を手伝って学費を用意し、20歳で大学に進学。経営学を専攻した。卒業と同時に結婚、バリバリ働こうと大手電機会社に就職したが、仕事はお茶くみ。小さな会社なら経営に関われるのではと転職するも「3年で結構です」と言われ、面を食らう。当時、女性は腰掛け入社や寿退社が当然のように求められた時代。「やる気はあるのに空回りばかり。自信を無くしました」
「もう、夫に食べさせてもらおう」と、35歳からは主婦に専念した。誘われたテニスに夢中になり、練習代は自分で稼ごうと、自宅近くのマクドナルドでパートを始める。率先して仕事し、実績を上げれば、昇進して時給も上がるシステムが性に合った。「頑張れば認められて、やりがいがあった」。接客や厨房(ちゅうぼう)のリーダー、新人教育などを任せられ、店長に次ぐマネジャーにまでなった。
仕事の楽しさや達成感を味わい、起業への思いが再燃。主婦の経験が生かせて、大きな設備もいらない掃除の会社をつくろうと動きだした。清掃技術やビル管理の専門学校に通い、地域の起業セミナーに参加。会社員時代のへそくり300万円を元手に、50歳を目前にして、現場でも働く念願の社長業を始める。
決心が揺るがないように、会社勤めをしていた夫には直前まで内緒にしていた。定年後の今は、時々、手伝ってくれるという。
社名の「M&M」は、あこがれた米ドラマ「奥さまは魔女」から連想した「マダム・アンド・マジック」と、自身の名前をかけた。「15年の主婦生活は、休暇の先取り。だから80歳まで現役で働きたい」。続けるために今、何をするか。考えをめぐらせている。 (発知恵理子)
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