2008/11/13
子らの個性に任せる
わが子二人は親譲りで絵心はない。絵の指導って何をするんだろう。新城市吉川の田園地帯に絵画教室「アトリエ・チャイルド・スペース」がある。初の作品展(八、九日、新城文化会館)を前に忙しい教室を訪ねた。
染色画家谷口茂春さん(52)、元幼稚園教諭薫子さん(50)夫婦が、自然の中で伸び伸びと感性を引き出そうと十五年前に始めた。茂春さんは東京で劇団や友禅染をした後、田舎暮らし志向で意気投合した豊橋市出身の薫子さんと、幼少時代を過ごした新城市にアトリエを構えたのだった。
土曜日の午後、各地から親子連れが続々。指導の前にまず自分もやらないと。子どもらと「ぬらし絵」に挑戦だ。ぬらした画用紙を用意し、自然素材の水彩絵の具を小皿にとって「好きなように描いて」と薫子さん。
しばし考えるが何も浮かばない。隣の女の子はすらすらと筆を走らせ、にじみ具合が絶妙なグラデーションを描いた。「そうか、適当でいいのか」と気を取り直し、茂春さんが用意していたおやつの焼き芋をイメージし、画用紙に向かった。
「描きたいように描かせ、指導はしない」と薫子さん。「いい色が出たね」など褒めるばかり。筆を振って絵の具を画用紙に飛ばし始めた子にも「面白い模様だね」と笑顔で接する。なるほど。個性に任せ、それを引き出せばいいのか。筆の持ち方を子どもたちに助言しようと思ったが、思いとどまった。
茂春さんは「イーハートーブ吉川」という染色工房を主宰。毎年、豊橋市で個展を開く。公民館ではモデルを雇い、大人が対象の講座も担当する。「デッサンからしっかり取り組みたい」という小学生がいれば茂春さんの出番だ。色遣いなどの基本的指導も。「学校でできないことをやり、個性を伸ばしたい」と口をそろえた。(阿部雅之)
【メモ】資格は特に要らないが、絵画や教師の経験があればベター。「アトリエ・チャイルド・スペース」は会費などで年収100万円ほどになるが、食べていくために新聞配達も。茂春さんによれば「貧乏を我慢でき、一つのことを長く続けられる性格が必要」。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから