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【岐阜】就活の定番 なぜリクルートスーツ?

2011/12/18

社会へ順応性示す武器

 2013年春の入社を目指す学生の就職活動が12月から本格化し、街中では黒髪に黒のリクルートスーツ、黒い靴の若者たちが目立ち始めた。2年前に就活をしていた私も地味なスーツに身を包んでいたが、画一的で没個性な格好に不満を抱きながらやり過ごした。個性を最大限に主張すべき面接で、なぜみんな同じような服を着るのか、就活中の学生や関係者に聞いた。(秋田佐和子)

 「ストライプが入ったおしゃれなスーツも着たいけど、目立ち過ぎる格好だと外見だけで判断されてしまいそう」。大垣市の岐阜経済大学のキャリア支援課で業界研究に励んでいた3年西谷明さん(20)は、大学入学時に買った黒色の無地のスーツで面接に挑む予定だ。

 人と接するのが好きで業界を問わず営業職を希望している西谷さん。スーツに合うように、長髪も短く切って、きれいに整えていたあごひげも近々そる。「就職難で先輩から苦労話もたくさん聞いた。これからの人生を左右する仕事選びで、外見だけで評価を下げたくない。無難な格好がいい」と、西脇さんは主張する。

 説明会を控え、全身黒色の無地のスーツ姿でキャリア支援課にいた三年森嵜裕俊さん(21)も「リクルートスーツ以外を着るなんて考えたこともない。就活支援サイトでも黒か紺のスーツを着た方が良いとアドバイスがあった。就活はリクルートスーツでするものだと思っている」と話す。

 地味な格好に抵抗を感じながらも就職のために主張を隠す人。制服みたいで、格好にいちいち悩まなくていいと、好評の人などさまざまな意見があった。

 同大キャリア支援部長を務める経営学部の竹内治彦教授は「地味なリクルートスーツに抵抗を感じる学生もいるかもしれないが、面接官に好印象を与えるには清潔感が欠かせない。就活中の作業服だと言ってスーツの着用を勧めている」と話す。

 ファッション業界に精通する平野学園(大垣市清水町)教育企画ディレクター平野宏司さんは「無難なデザインのリクルートスーツは確かに没個性の象徴的なものだが会社組織に属する適正を判断する就職面談では、社会集団への順応性を示す格好のアイテム」と解説する。

 アオキ大垣インター店(同市築捨町)の市原信治店長は「就活はさまざまな業界を渡り歩く。どんな場面でも合うスーツを勧めている」と話す。

 女性用のリクルートスーツは、黒色かダークグレーがほとんど。同じような格好をすることに私自身は違和感があった。短時間で人間性を判断される面接の場で、服装も自分をアピールする数少ない手段のはず。「その人に似合う色や柄なら許されても良いのに」。そう素朴に感じていたが、同じようなスーツを着ることに深い意味が隠されていることを知った。