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【社会】就活 厳冬 震災で延期長期戦/大手で苦戦ヘトヘトに

2011/11/19

大卒内定率59.9%
「落ちることにも慣れた」

 18日に発表された来春大卒予定者の就職内定率は、史上最低だった前年よりは回復したものの、6割弱と過去2番目の低水準にとどまった。東日本大震災の被災地はもちろん、東海地方でも厳しい状況は変わらない。希望の会社に落ち続けることに慣れた学生も。内定を取る人と取れない人に二極化しているとの指摘もある。記録的な円高が続き、改善が期待できない状況に就職活動を控えた大学3年生にも不安が広がっている。

【学 生】
 証券会社に内定した南山大総合政策学部4年の近藤卓也さん(22)は、エントリーシート(応募用紙)を100社以上に送った。3月以降はゼミも欠席し、毎日2、3社の面接を受けた。「初めは落ちるとショックだったけど、そのうち、何とも思わなくなった」
 南山大法学部4年の二井華子さん(22)は、奇妙な感覚を覚えている。「知人が就職活動をせずに授業に行く姿に、授業を優先するなんて少しおかしいんじゃないかと思った」。そのくらい、就活は厳しさを増している。

 こうした先輩の姿に、3年生も不安を膨らませている。朝日大法学部3年の玉田三統さん(21)は「放送や出版など一般企業を目指しているが、厳しそう。公務員に志望を変えようかな」と迷う。

 さらなる不安要素もある。経団連の方針で今年から、再来春卒業の学生に対する企業の広報活動開始が、2カ月遅れの12月1日に変更となった。選考は4月開始で変わらないため、学生には短期決戦が強いられる。

 「会社説明会の開始時期が遅くなれば、企業研究や志望動機を考える時間が多くなる。前向きに考えるしかない」と言う名城大法学部3年の高岡隼人さん(21)は、金融業界を回ってみるつもりだ。

 名城大の就職担当者によると、東日本大震災で大企業が採用時期を延期。中小零細企業は内定後に大手に取られることを避けるため、大手の出足を見ながら少しずつ求人を出していた。その結果、「例年は5月上旬が内定のピークだが、今年は10月に入っても求人が続いている」という。「節電の影響や円高、タイの水害など不安定要素が多い」のも今年の懸念材料だ。

 不況を背景に、学生の目が中小企業にも向けられてきたとはいえ、大手企業に志望が集中しているのが現状。ある担当者は「大手で失敗し続け中小の採用が本格化するころには疲れてしまう学生が多い」とマッチングの難しさを吐露した。


◆地元志向でミスマッチ

【被災地】
 東日本大震災の被災地を含む北海道・東北地区の大学生の就職内定率が前年同期より若干増えた理由を、福島大の南俊二就職支援室長は「震災で地元での就職は厳しい部分もあるが、全国から被災地支援の求人が増えた」と説明する。
 福島大の10月の内定率は60%で前年同期より1ポイント増。求人件数は1700件ですでに昨年を100件上回った。ただ、県外からの求人が多く、大半の学生は地元志向が強いため、求人内容のミスマッチが課題だという。

 宮城県石巻市の石巻専修大4年の末永由里子さん(22)は、市内の税理士事務所に内定したが「地元企業の多くは震災で採用数が減った。地元希望の友達は、みんなまだ決まっていない」。仙台市の家電量販店に内定した同大4年の日野勇太さん(21)は「被災経験は同情してもらえたが、就職にプラスにはならなかった」と話す。

 【企 業】 
優秀な学生 取り合いに
 東海地方では円高などで採用を抑える企業がある一方で、採用担当者からは「買い手市場とは感じられない」との声も聞かれる。
 自動車部品最大手のデンソー(愛知県刈谷市)は、来春の採用を金融危機前の2008年春と比べて四割減らした。円高で輸出の採算が悪化しており、広報担当者は「足元の厳しい環境を踏まえた結果だ」と話した。

 JR東海(名古屋市)は、団塊世代の大量退職が一段落したとして、来春の採用を前年より7%ほど減らしたが、過去五番目の高水準。リニア中央新幹線建設に向けた人材確保も必要で、同社広報部は「好不況に関係なく安定的な採用を続けている」と説明する。

 一方、採用数を増やした電気機器メーカーのイビデン(岐阜県大垣市)の担当者は「優秀な学生は取り合い。楽ではない」と漏らし、「(内定が取れる学生とそうでない学生で)二極化しているのでは」とみている。

大学職員に入社志望書の添削を受ける学生(左)=18日、名古屋市昭和区の中京大で
大学職員に入社志望書の添削を受ける学生(左)=18日、名古屋市昭和区の中京大で