2011/11/18
職場の上司らによる「パワーハラスメント」が原因で退職することになったのに、理由を「自己都合」とされ、雇用保険の失業給付で不利な扱いを受けた看護師の体験を4日付の本欄で紹介したところ、同じ経験をした人たちから多くの声が寄せられた。反響を紹介する。 (はたらく取材班)
「精神的にも肉体的にも限界だった」。愛知県の女性(47)は一年ほど前、2年勤めたパートを辞めた。退職届には「仕事を1人でやらされた」「陰口を言われた」など年長の同僚から受けた嫌がらせを詳細に書いた。しかし、会社は受理を拒否。自己都合にされた。「また同じようなことがあるかもしれないと思うと、怖くて踏みだせない」と現在、仕事はしていない。
三重県の女性(50)は、社長からのパワハラで8年前、10年間勤めたパートの仕事を辞めた。社長に応接室に呼ばれ「おまえがいるとほかの人が仕事をやりにくい。今後も仕事に来るなら誰とも口をきくな」などと罵声を浴びせられたという。
理由が分からず、説明を求めても「そういうところが悪い」と一方的に責め立てられた。「辞めると言うまで帰してもらえない雰囲気で、納得していませんでしたが仕方なく辞めると言いました」。密室での出来事だったため証言者はおらず、ハローワークも取り合ってくれなかった。「8年たった今でも、気持ちは晴れません」
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次の仕事のことを考え、自ら自己都合の退職を受け入れた人も。50代の看護師は、上司から身に覚えのないトラブルについて責任を問われ、体調を崩した。「辞めさせられたということだと、新しい仕事が見つかりにくいかも」と考え、自己都合の理由を書いた。
岐阜県の女性(52)は8月、パワハラで10年続けたパートを辞めた。同じ職場で自分の子どもも働いていたため、不本意だったが自己都合にした。会社側から退職届の手本を示され、「この通りに書いて」と指示された。
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ハローワークでの離職理由の判断の手続きで異議を申し立てて粘り強く交渉し、理由の変更などを勝ち取ったケースも。
愛知県の保育園で働いていた看護師の女性(39)は9月、園長の暴言に耐えかねて退職した。「自己都合」で失業保険を申請したが、ハローワークの窓口で「納得いかなければ、申立書を出せば3カ月の待機期間がなくなる場合がある」とアドバイスを受けた。同僚に頼むと協力が得られ「会社都合」に変えられた。
パート先の上司から精神的苦痛を受けて辞めた三重県の女性(39)は、退職届に経緯を書いた。上司に「自己都合に書き直して」と言われたが、そのまま提出。しかし、会社が作成する離職票には自己都合と記載されたため、ハローワークで事情を話すと、会社側に聞き取りをしてくれた。
だが、2カ月近く待って届いたのは女性が退職届に書いた事実はなかったという結論。本社の人事に掛け合うと「申し訳ないが力になれない」との回答だったが、人事担当者が理解を示してハローワークに口添えしてくれたため、すぐに給付を受けられた。
<失業給付の支給日数と時期> 年齢や勤務日数、理由で異なる。例えば、45歳以上60歳未満で、勤めていた期間が5年以上10年未満の人が「会社都合」で退職した場合、給付日数は240日間で、離職後8日目から支給される。これが「自己都合」だと、給付日数は90日間で、支給まで3カ月待機しなくてはならない。
労働問題に詳しい鷲見堅一郎弁護士は「自己都合と会社都合では失業給付がまったく違ってくる。辞めざるを得ないなら会社都合にするよう頑張った方がいい」とアドバイスする。
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