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【愛知】卵割りにも集中力 甘さ支える下積み時代

2011/11/08

有川正俊のケーキ屋さん体験

 東海市はセンスの良い手作りケーキ店が多い「スイーツのまち」。きれいなケーキを作る仕事は、今も昔も小、中学生の女の子の憧れの職業だ。3歳のわが娘もケーキ屋さんに憧れる。市内の人気店で半日働かせてもらい、ケーキ屋さんの仕事を体験した。
 訪ねたのは、同市加木屋町の「セリュリエ」。午前九時、朝一番の仕込みが終わった店舗に入った。

 白い制服にエプロンを着け、手をアルコール消毒すると、周りから甘い匂いが。うっとりしていると、お店を経営する小笠原俊介さん(32)から「それじゃ、卵を割ってもらいますか」。早速仕事をもらった。

 聞くと仕込みは午前7時から。「準備が大事。夜遅くて、朝も早い仕事」と小笠原さん。

 卵同士をぶつけて割る。殻は絶対に入れられない。急いで割ると、黄身が崩れる。「黄身がきれいな形でないと、殻が入ってしまったかが、確認しづらい。正確さと時間の勝負です」

 見ると商品を作る度に容器を洗い、アルコール消毒をする。「多くの種類を用意して、お客さんに見せる仕事。段取りよく、作っていく必要があるんです」

 次に挑戦したのが、焼き上がったクッキーを、台から容器に移す作業。少し気を抜くと、すぐに欠ける。「生菓子はクッキーより崩れやすい。より集中力が必要」と小笠原さん。ケーキのゼラチン量を減らし、舌触りをよくすることにこだわっている分、崩れやすいそうだ。クッキーでビクビクしているようでは、ケーキは触れない。

 小笠原さんは店を経営する前に、東京の有名店などで八年間、修業を積んだ。「容器を洗う作業など、菓子を作りたくても、作らせてもらえない時期もあった」と厳しさを話す。菓子店経営に憧れる子どもには「ぜひ学生時代に、チームプレーや根性がつくことに打ち込んでほしい」とアドバイスする。

 確かに、立ちっぱなしで、集中力も必要。華やかに見えるが、体育会系の一面も。決して“甘い”ものではなかった。

小笠原さん(左)の指導を受け、ケーキ用の卵を割る作業に取り組む=東海市加木屋町で
小笠原さん(左)の指導を受け、ケーキ用の卵を割る作業に取り組む=東海市加木屋町で