2011/10/07
就職活動で内定を得た学生の家族向けに、会社説明会を開く企業が増えつつある。背景には、少子化や核家族化の影響で親子関係が強まっていることや、厳しい職場環境でも仕事を続ける支えを家族に求め、定着化を図りたいとする企業側の意図があるようだ。 (安食美智子)
「(ご両親には)ぜひ、うちの会社を知って、お子さんをサポートしていただきたい」
ブライダル、フラワー事業など多角的に展開する「ポジティブドリームパーソンズ」(東京都渋谷区)。杉元崇将社長は関連施設の一室で、来春採用予定の16人の親たちに呼び掛けた。会社概要や教育システムを紹介する映像の最後には、社長と肩を並べた内定者全員の写真が映し出された。
内定者の1人、真々部(ままべ)千佳さん(23)の母・佳代子さん(52)=板橋区=は「最初は、親にここまでするのかと驚いたが、パンフレットだけでは分からない会社の熱意が伝わり安心した」。千佳さんも「親にも仕事内容を説明してもらえ、ありがたい」と語る。
梅野毅(つよし)さん(22)の母・加代子さん(49)は、奈良県大和高田市から駆けつけた。「夢がある企業と思えた。人事や教育制度などの話も聞け、息子が良いスタートを切れると確信した」。毅さんは「会社の話を家でできるつながりをつくってもらえた」と語る。
親向けの説明会は、今年で3度目。杉元社長は「大企業や知名度を重視しがちな親子は多く、うちの会社の将来性を理解してもらう必要がある」と開催理由を説明。「最近は、就職活動でも子どもが親に判断を託しがち。入社後も親の意見で内定を辞退するなどのケースが見られる。親の不安を払拭(ふっしょく)し、フォロー役になってもらうのが重要」と補足する。
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有料老人ホームなどを運営する「東京海上日動サミュエル」(横浜市)も3年前から説明会を始めた。今年も内定者15人の親を対象に会社説明会を川崎市内のホームで開いた。
川崎守恒社長が「今後高い志を追求、実現する上で困難を感じる時、よき理解者として背中を押してください」とあいさつ。各地のホームの概要、社員研修制度が説明され、親からは「一人暮らしができるか不安。自宅から通える施設を希望できるか」など質問が上がった。
内定者で名古屋市の中井千紗さん(21)の母・貴美子さん(49)は「義母を施設に預け、介護の様子を見てきた。娘が異郷でこの業界に進むと知り戸惑ったが、介護の質の高さや入社後の進路の説明を受け安心した。今後10年のライフプランも見えた。本人が決めた道を信じたい」と語る。
川崎社長は「職場の先輩の歩んできた道や働きやすさなどを伝えれば、仕事をするわが子に置き換えて考えてもらえる」。労働環境が過酷とされる介護業界での就職を不安に思う親は多く「会社の目指す方向性が確かだと理解してもらう機会が必要」と説明する。
若者の就職活動事情に詳しい人材コンサルタントの常見陽平さんは「少子化の影響で、親子関係が“友達化”している」とし、親が子に関わる度合いが強まっている傾向を指摘。「親がわが子の会社説明会の予約を取り、親子向けの合同就職説明会を開く会社も少なくない」と語る。
また「会社側も社長自ら親あてに手紙を送るなど、定着率を高めるために親を重要視するケースが増えている」と背景を説明している。
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