2011/08/31
学生 職人 交流広がる
◇業界苦境「志ある若者期待」
◇進路探し「奥が深く魅力的」
有松絞や名古屋友禅など市内の伝統工芸の職人と、大学生がインターンシップ(就業体験)を通じて交流する動きが広がっている。産地の衰退や後継者不足の打開を図る職人と、就業難の中で進路探しに懸命な学生。両者の思いが重なり合った。(相坂穣)
緑区有松の旧東海道周辺で400年の伝統を誇る有松絞の染色職人久野剛資さん(56)の工房。木綿の布を糸でくくり、紫や赤、緑など色とりどりの染料で絞を染め抜く作業にいそしむ若い女性の姿があった。
名古屋芸術大(北名古屋市)の2、3年生の女子学生5人で、今月18日から31日まで工房を訪れている。大学が学生を地元の企業に派遣する就職支援事業の一環。卒業後の進路選択に重点を置いた。今月2月には、県立芸術大(長久手町)や市立芸術工学部(千種区)の学生も就業体験をした。
久野さんは「2、3日の短期ではなく、2週間働いてもらうのに意味がある。インターンシップでは、やりがいとともに、業界の厳しい現状を知ってもらえる」と歓迎する。
名古屋芸術大の学生は。最初の数日で伝統技法の蜘蛛絞や縫い絞を学び、2週目に一般市場向けの絞のストールを完成させるという課題を持っている。
デザイン学部3年でイラストを学ぶ石神千春さん(20)は「伝統工芸は奥が深くて魅力的。後継者がいないならやってみたいかも」。美術学部3年の角谷紗裕美さん(20)は「授業では経験できないことばかりです。社会に出て、ここで学んだことは生きるはず」と熱心に作業を進めた。
尾張徳川時代から続く名古屋友禅の伝統工芸士で西区万代町で工房を営む堀部満久さん(64)も3月の春休みに名古屋芸術大の学生を指導した。
堀部さんは「伝統産業は年々衰退し、もうからない。『職人になって』とは頼みにくいが、インターンから1人でも志のある子が出てくれば」と、期待を口にした。
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