2011/08/25
7月23日と8月12日付の本欄で、病棟に勤務する看護師の長時間労働について取り上げたところ、いずれも女性の看護師や元看護師から意見が寄せられた。「次世代の人たちが働ける環境を整えなければ、医療は崩壊する」-。危機感が伝わる内容ばかりだ。 (はたらく取材班)
■休息取れず
東海地方の公立病院で看護師長を務めるAさん(52)は「昔に比べると業務が増え、忙しくなった」と打ち明ける。看護知識や医療機器について、日々勉強が欠かせないが、学習会が休日に当たることも多い。会議が出勤日になるよう努力するが、20人ほどの職場では一人一人の要望に応えるのは難しい。
3年前まで、集中治療室を担当する常勤看護師だった愛知県のBさん(37)は、今でも恐怖感が忘れらない。二交代制の夜勤は午後4時半から午前8時45分まで。明け方に居眠りしてしまい、患者の状態を伝える機器の警告音で目覚めた。急変ではなく支障はなかったが「患者に何かあっては大変」と考え、仕事を辞めた。
■サービス残業
外科病棟に7年間勤務した愛知県の看護師のCさん(31)は、三交代制の夜勤(夜勤が夕方から深夜までの準夜勤と、深夜から朝までの深夜勤に分かれる)で、多いときには月に11回こなした。12時間に及ぶ日勤でも残業があり、深夜勤までの間に一時間半ほどしか仮眠できなかった。退院患者の記録を書くなど、いくつかの業務では残業手当すらもらえなかった。
Bさんは夜勤前、点滴の準備などのため、定時の30分前に“サービス早出”をした。「早出をしろとは言われないが、全員が当たり前にやっていた」
日本医療労働組合連合会の関係者によると、こうした勤務時間外の労働は看護師の間では一般的という。
看護師たちが実践する「奉仕の精神」が、厳しい労働を後押ししている。Aさんは「過酷な状況を我慢するのが美徳だという考えが残っているけれど、黙っていてはだめ」と筆を執った。
Cさんは「労働条件を問題と考えたこともない人が多い。人の命を預かる仕事なのに、労働時間の規制が甘い」と疑問を感じる。現在は体調を崩して休職中。「復帰しても再び体調を崩すのでは」と不安は消えない。
■患者も変化
Aさんは患者の変化も指摘する。「小さな子どもを抱えるお母さんたちも昔と変わった」。発熱時、座薬を入れてすぐに熱が下がらないと、心配になって受診する親が増えたという。
Cさんは、入院患者が禁止区域で携帯電話を使ったため別の看護師が注意したところ、逆に怒鳴られた場面を目撃。自身も、面会時間を守らず苦情が出た男性を注意したところ、30分間も怒鳴り続けられた。「規則を守れない、難癖をつける患者が増えた」と感じる。
◆3交代夜勤 月10回も 看護協会調査
日本看護協会が五月にまとめた調査では、病棟看護師の過酷な勤務実態が浮かび上がる。
2010年11月の1カ月間について聞いたところ、一般病棟で働く三交代制勤務者の夜勤回数は、平均で8・5回(準夜勤4・2回、深夜勤4・3回)。特に集中治療室では夜勤は10回に及ぶ。二交代制勤務者では、一般病棟で夜勤4・5回だった。
三交代制勤務者については、日勤を務めた後に7時間程度空けるだけで次の深夜勤に入るシフトが、1カ月間に最低1回あった人の割合が77・3%に上った。二交代制勤務者の夜勤も過酷で、拘束時間は「16時間以上」が87・7%を占めた。
体調が「非常に不調」「やや不調」と回答した看護師の割合は、20代の交代勤務者で31・0%。四十代になると40・7%に増える。いずれの年代も、一般女性労働者の平均(20代で12・5%、四十代で17・4%)を大きく上回る。
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