2011/08/12
7月22日の本欄で、病院に勤務する看護師の長時間夜勤の問題を取り上げたところ、「長時間の勤務体制は違法では?」との問い合わせが寄せられた。長時間夜勤をめぐる法規制の現状を調べた。 (佐橋大)
「私は民間病院に勤める介護士です。私の病院でも看護師の夜勤は16時間勤務で、記事と同様に患者の急変があれば、ほとんど休憩は取れず、とても疲れるとの声を聞きます」
長時間夜勤への疑問を寄せたのは、愛知県の30代の男性介護士。自身も看護師と同じように夜勤で16時間勤務をこなし、毎回、大きな疲労を感じるという。
労働基準法は使用者に対し、休憩時間を除いて1週間に40時間を超えて働かせることや、1日に8時間を超えて働かせることを原則、禁止している。これを超える場合は時間外労働となり、残業代が発生する。
ただし不規則な業務もあるため、同法には「変則労働時間制」の規定がある。労働組合との協定や就業規則があれば、1カ月以内の一定期間で平均週40時間を超えなければ、残業代を払わずに労働させることができる、とする規定だ。多くの病院では、この制度が採られているという。
二交代の夜勤は、午後4時半ごろから翌日午前9時半ごろまでの勤務が一般的。1時間の休憩がある場合、勤務時間は16時間。1週間の残り5日間の労働時間を計24時間以内にすれば、形式上は違法とならない。
ただ、関係者は「労働内容は違法に近い」と指摘する。
労基法では、労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない。ところが日本医療労働組合連合会(医労連)が、組合員の看護職員を対象にした2009年の調査では、法定の休憩時間が「まったく取れていない」「あまり取れていない」の合計が約3割に上った。人手が足りず、患者の状態によって休憩が吹き飛ぶ場合が少なくないようだ。
時間外労働をした看護職員の3分の2が、残業代が支払われない違法な「サービス残業」をしたとも回答した。超過勤務の申請に、上司や病院の「無言の圧力」があることなどが要因という。
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長時間勤務とともに看護師を悩ませるのが頻繁な夜勤。1992年に定められた看護職員確保法の基本指針は、三交代の場合「夜勤は月8日まで」、二交代は「月4日まで」としているが、拘束力のない努力規定。医労連の10年調査では、三交代で9日以上の夜勤をしている看護職員は23%。10日以上も約10%いた。二交代では33%が指針に抵触していた。
医労連の中野千香子副委員長は「タクシーやトラックの運転手には、事故防止などの観点から拘束時間や運転時間、休息時間などの厳しい規制がある」と指摘。「看護師や医師は、患者の安全に携わる職業にもかかわらず、特別な規制がない」と語る。
国際労働機関(ILO)の看護職員条約では、看護師など夜勤労働者の労働時間を1日8時間、週32時間以内、勤務と勤務の間隔を12時間以上としている。日本はこの条約を批准しておらず、中野さんは「日本も条約の基準に沿った規制をすべきだ」と提言している。
<病院の看護師の勤務> 病院では昼間の「日勤」と、夕方から午前0時ごろまでをカバーする「準夜勤」、その後、朝までをカバーする「深夜勤」の3交代制が主流。最近は日勤と、夕方から翌朝までをカバーする夜勤の2交代制が増えている。
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