2011/08/04
定年退職後、引き続き働き続ける場合、賃金が下がるケースが多くあります。このため、賃金が下がった60歳代前半の人には、雇用保険から高年齢雇用継続給付が65歳に達するまで支給されます。しかし、高年齢雇用安定法で2013年度から65歳までの雇用確保が義務づけられるのに伴い、廃止を含めた給付金のあり方が課題に挙がっています。
雇用の継続を支援するため、雇用保険から支給されるのが高年齢雇用継続給付です。
60歳時に比べ、賃金が25%を超えて減少した(75%未満になった)人が対象です。ただ、雇用保険の被保険者期間が五年以上あることが条件です。
支給額は、60歳以降の賃金に応じて、最大で賃金の15%です。支給期間は65歳に達するまでです。
給付受給者数は高齢化により年々増加、09年度は22万人に達しました。支給総額は1424億円でした。
●目的は薄れた?
雇用継続で働く人に、給付金は欠かせないものです。しかし、定年後、賃金が下がるのは高年齢雇用継続給付や在職老齢年金など公的給付の支給を考慮したことも影響しています。
このため、本来、賃金として支払われるものを公的給付が行っている、高年齢者雇用安定法で六十五歳まで雇用されることに伴い給付の目的は薄れた、との指摘もあります。
また、財政が厳しいなか、雇用保険への国庫負担の軽減も必要との意見も出ました。このため、07年から高年齢雇用継続給付のあり方を見直す議論が進められてきました。
07年には、労働政策審議会の雇用保険部会報告で、給付は段階的に廃止するとされました。その後、09年には、継続雇用の現状などを踏まえ、13年度以降についてのあり方をあらためて検討することとなっていました。
●賃金体系の議論が必要
では、廃止の理由とされた点について考えてみましょう。
失業給付などへの国庫負担もあるものの、もともと雇用保険は労使の保険料で成り立っています。しかし、高年齢雇用継続給付については、部会報告が出た07年に国庫負担が廃止されています。
この廃止などによって、雇用保険への国庫負担支出割合も本来の25%から13・75%へ引き下げられました。継続給付を廃止しても国庫負担が直接減るわけではありません。
また、賃金は労使で決定するもので、給付に頼る賃金体系を是正する必要があるのは事実です。しかし、65歳までの雇用確保ができたとしても、賃金体系の議論はこれからです。
賃金体系の議論も進んでいないうえに、継続給付は労使の保険料のみで運営されています。賃金も継続給付も財源はともに労使のお金であることから、労使とも「給付制度は維持」を掲げています。給付を廃止するなら、保険料などを引き下げる必要があると指摘しています。
雇用については、労使だけでなく、国も責任を負っています。高齢者の働く意欲を生かし、賃金体系をどのようにするのか? 国民の生活設計に関わる課題です。
編集・亀岡秀人
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから