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【暮らし】<はたらく>2交代制拡大過酷な16時間 看護師の勤務

2011/07/22

 病院で働く看護師の勤務で、長時間の夜勤がある「二交代制」が広がっている。連続16時間勤務になる場合もあるため、日本看護協会が「長時間勤務は医療安全や看護師の健康へのリスクがある」と、厚生労働省に長時間夜勤の是正を求めるなど、二交代制拡大に歯止めをかけようとする動きも活発だ。 (佐橋大)

 「二交代の導入で肉体的、精神的にきつくなり、多くの看護師が辞めていきました」。名古屋市内の民間病院に勤める50代のベテランの女性看護師は振り返る。

 以前は、緊急・重症な状態にある患者が入院する30余床の急性期病棟を、夜間は準夜勤、深夜勤の各2人でカバーする三交代制だった。4年前、病院側の提案で、夜勤2人が1晩、カバーする二交代制になった。

 夜勤の頻度は月8回程度から4回ほどに減ったが、密度が格段に濃くなった。夕食、朝食休憩のほか1時間の休憩がある前提だが、休めることは少ない。「休憩の間、病棟の看護師は1人。ナースコールや容体の急変があれば休んでいられない」

 16時間勤務の後は、看護記録の作成など残業に追われる。午前10時に帰れれば早い方で、疲労は蓄積するばかり。しかも二交代制になって体調を崩す看護師が増え、カバーで夜勤の回数は月5、6回に増えていった。入院期間の短縮化で患者の入れ替わりが激しくなったことも、看護師の負担増になっているという。

 看護師の間では、夜勤を3人に増やす意見も出たが、病院は体制を見直していないという。

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 日本看護協会の調査では、2交代制の看護師の割合は、2001年の18%から、05年24・7%、09年29・4%と増えている。10年の調査では、二交代制で働く看護師の九割近くが、16時間以上働いていた。このような長時間夜勤は欧米にはないという。

 愛知県医療介護福祉労働組合連合会(医労連)の西尾美沙子書記長は「最近では、民間病院から自治体病院へと二交代制が広がっている。病院が導入したがるのはコスト圧縮のため」と指摘する。準夜勤や深夜勤には残業が発生しやすい。三交代だとそれぞれに残業代が発生するが、二交代なら準夜勤の残業代が浮くからだ。

 ただ三交代制の現状にも課題がある。「日勤から深夜勤」といった無理なシフトが、多くの病院で常態化しており、二交代が広がった要因の1つという。

 夕方に日勤を終え、日付が変わった午前0時すぎから再び深夜勤に入る。勤務終了から次の勤務まで8時間足らず。西尾さんによると、残業の慢性化で勤務間隔はさらに短くなり、日勤から深夜勤へ連続で働くケースもある。「二交代なら少しはましになるかも、と看護師側も期待してしまう素地がある」という。

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 三交代制での勤務環境悪化も背景に拡大する二交代制。最近では、その弊害を説く意見が目立つ。看護師の労働実態に詳しい労働科学研究所の佐々木司・主任研究員は「二交代制は、夜間勤務中の眠気が三交代より強い。患者さんにとって危険な勤務形態」と指摘する。

 日本看護協会は5月、「二交代勤務者の離職意向は三交代勤務者より高い」との調査結果を示し、就労継続のため、夜勤の長時間労働の是正を目指す姿勢を鮮明にした。

 協会は長時間夜勤とともに、看護師の負担感が強い三交代制の勤務間隔の短いシフトも問題視。厚労省に対して6月、看護師の勤務の質改善に向け、支援を求めた。