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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 手織り

2008/10/29

世界で一つ 愛着わく

 古くから繊維産業が盛んな三河地方。その基本である手織りを学んでみようと、蒲郡市の観光名所・竹島近くの工房「竹島クラフトセンター」の門をたたいた。
 センターを主宰する鈴木敏泰さん(64)は、本職の織物デザイナーの傍ら、自ら手織り作品を制作するとともに、教室で技術を伝える。「三河木綿」の復元を旗印に、地元繊維業界の活性化にも力を注いできた。

 そんな鈴木さんの手ほどきでランチョンマットを織ることに。まずは糸選び。何色もの中から黄色、緑系の三色の糸を選んだ。

 次はデザイン。三河木綿をイメージした紺色をベースに、選んだ三色をどう配すか、センスが問われるところだ。左右対称にしま模様が入るよう色鉛筆で下絵を描くと、鈴木さんから「なかなかいいじゃん」。

 いよいよ織機に向かった。横糸を通す度に、糸を引き寄せる筬(おさ)を動かし、レバーで縦糸を上下に入れ替えたら、もう一度、筬を今度は強めに引く。この作業を延々繰り返す。

 「やっているうちに陶酔してしまう人もいますよ」。確かにリズムが出てくると、軽い“無の境地”に。気付くと織り始めてから二時間半。縦四十五センチ、横三十センチのマットができていた。

 これで完成と思いきや工程はまだあった。織機から離した縦糸を結ぶ作業。これがかなり難しく、縦糸を六本ずつまとめ、計八十回結び終えると、さらに一時間がたっていた。

 「デザインから織り方まで、世界で一つしかないものができるのが手織りの魅力」と鈴木さん。できあがったばかりのわが作品は、よれよれ気味だが「少しぐらい下手な方がかえって手織りらしくていい」と絶妙のフォロー。なんだか愛着がわいてきた。(中山聡幸)

 【メモ】美術系の大学で染色や織物を学び作家活動に入るか、作家に弟子入りして独り立ちを目指すのが一般的。収入は千差万別。鈴木さんは「教室の中からプロの作家が生まれれば繊維産地としてのアピールにもつながる」と期待している。

作品を制作する鈴木さん=蒲郡市竹島町で
作品を制作する鈴木さん=蒲郡市竹島町で