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【暮らし】<はたらく>就活戦線 震災の影濃く

2011/05/20

 東日本大震災の影響で遅れていた一部企業の採用活動が徐々に再開し、来春卒業予定の大学生の就職活動が本格化している。経済の先行き不安が増し、今年も厳しい就活戦線。大手と中小企業の採用日程が例年と逆転するなどスケジュール調整に悩む学生らに、関係者は「中だるみせず活動を」と呼び掛ける。 (竹上順子、境田未緒)

 関東地方の中でも震災被害が大きかった茨城県では、多くの就活生が影響を受けた。「2~3週間は電車が動かず、東京での会社説明会に行けなかった。何もできず本当に焦ったので、就活を再開できてホッとしている」と、同県龍ケ崎市に住む私立大4年の男子学生(21)は振り返る。

 同県ひたちなか市のアパートが被災した私立大4年の女子学生(22)は、県北の実家に帰って活動を中断。不安になって大学の就職課を訪れ「震災の影響は皆同じ。自分らしく活動を」と言われ、再びやる気が出たという。

 一方、被災地以外では、一部企業の採用活動延期で気が抜けてしまった学生も。今月初旬、東京・新宿で開かれたマイナビ就職セミナーに参加した私立大4年の女子学生(21)は「忙しいはずの時期が暇になり、中だるみした」と明かす。

 就活サイト「マイナビ」の望月一志編集長は「面接の延期などで企業や業界に対する熱が冷めてしまった学生も少なくない」と懸念する。

 被災地以外や中小の企業は、採用日程を変えていない場合が多い。大学も、間延びムードの学生に注意を促すのに必死だ。

 名古屋大(名古屋市)就職支援室の大脇甲男室長は「(大手の採用活動が再開する)六月まで動かないという学生もいる。関西では4月に内々定を出した大手もあり、学生には能動的に動くよう呼び掛けている」と話す。

 企業の採用意欲の減退を懸念する声も。名古屋外国語大(愛知県日進市)キャリアサポートセンターの加藤淳課長は「被災地でなくても多くの業種に影響が出そう。採用が今春より良くなるとは思えない」と語る。

 例年は五月の連休前後に大手の内定が出て中小企業が続くが、ことしは逆転。「企業は採用数を減らさないと言っているが、中小に取られて人材がいなかったら、予定数より少なくても仕方がない、という大手企業もある」(就職情報会社)。実際の採用がどうなるかは不透明な状態だ。

     ◇

 就活生の中には、空いた時間でボランティアに取り組んだ人も。南山大(名古屋市)4年の宮下友大朗さん(21)は、市場や店で廃棄される食材を使って料理を提供し、募金を被災者支援に充てる1カ月限定の学生カフェ(同)で、料理を作るなどした。

 震災後、志望企業の選考が次々と延期に。最初は「早く就活を終えたいのに」と思ったが、カフェでのボランティアを通して「人のつながりが大切と気付いた」と語る。商社志望で以前は「大きな仕事を」と考えていたが、今は「困っている人に食料を届けるなど、誰かを幸せにするシステムを商社の仕事でつくりたい」と思うようになった。

 学生カフェの呼び掛け人の1人、名古屋大四年の鈴木大元(ひろもと)さん(21)も就活生。「選考の中止決定が早い、遅いなど企業の個性が現れた」と、震災は学生側にも企業を見る機会になったと語る。友人の中には、選考の有無を前日に確認して東京に出掛け、会社で「中止」を告げられた人も複数いたという。「あらためて就職を考える時間が持てた」と振り返る。

 合同企業説明会を開くなどしている学情学校企画部の東修三部長は「内定が取れない学生は、就活の活動量が少ない傾向がある。延期企業が採用活動を全面再開する前の今、積極的に動くことで成長もできる」と指摘している。

東京で開かれた合同企業説明会=東京都新宿区で
東京で開かれた合同企業説明会=東京都新宿区で