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【長野】伊那で実れ福島の底力 果物の匠佐藤さん、風評被害受け移住

2011/04/19

 福島第1原発の事故を受け、福島県伊達市の農業法人社長、佐藤浩信さん(51)が、伊那市に移住して果樹園を営むことになった。佐藤さんは18日、同市内の農地を見学に訪れ「風評被害で立ちゆかなくなっていたが、伊那市の人たちの支えで移住の決心がついた」と語った。

 佐藤さんが営む農業法人「伊達水蜜(すいみつ)園」は、伊達市内の農地約3・5ヘクタールに桃やサクランボ、リンゴなどを栽培。2003年設立で、従業員数は4人。佐藤さんは「果物の匠(たくみ)」とも呼ばれ、甘い蜜が入ったリンゴは全国にファンがいるという。

 農園は福島第1原発から約60キロ離れているが、事故以降は風評被害で取引先からのキャンセルが相次ぎ、売り上げはほとんどゼロの状態になった。

 先行きが不透明な中、取引のあった伊那食品工業(伊那市西春近)が仲介し、JA上伊那が伊那市内の農地約50アールを確保。移住して、この地で果樹園を経営していくことになった。

 佐藤さんは「伊那の気候や土は果樹栽培に適しているように感じた」と感謝。一方初めての土地での一からの挑戦に「これから試行錯誤が続くのは覚悟している。原発事故にも負けない、福島県民の底力をみせたい」と話していた。 (小佐野慧太)

土の様子を確かめる佐藤さん(左)=伊那市西箕輪の牧草地で
土の様子を確かめる佐藤さん(左)=伊那市西箕輪の牧草地で