2011/04/10
避難で収入ゼロ、長期就労に迷い
被災者に無償提供された公営住宅に続々と入居があり、避難した子どもが新しい学校に通いだした静岡県。だが震災で仕事を失った親は「これからどう家族を養えばいいのか」と、不安を抱える。県に避難してきた被災者は7日現在で774人。県内企業で被災者を雇用する動きはほとんどなく、受け入れ態勢には課題を残す。(報道部・原田遼)
無邪気に部屋で遊ぶ娘のかたわらで、福島県双葉町から避難してきた男性(32)はぽつりとつぶやいた。
「世間は復興、復興というけど、僕らにその二文字が見えないですよ」
男性の自宅は原発から10キロ圏内。親戚のいる浜松市に家族5人で避難し、無償で公営住宅に入居した。3人の娘は学校や保育園が受け入れてくれたが、月40万円の収入がゼロになった。福島第一原発の設備をメンテナンスする仕事をしていたが、10キロ圏内にある会社は操業停止となり、口頭で解雇を通知された。
公営住宅は1年間は無償だが、電気代や生活費は自己負担。わずかな貯金で食いつなぐ毎日に自宅のローン返済が重くのしかかり、すぐにでも仕事に就きたい。
一方で避難指示が解除されれば、福島に戻りたい思いもあり、長期の雇用に迷いがある。「このご時世、いつやめるかわからないような人間を雇ってくれるところなんてないでしょ。もし前と同じ給料で雇ってくれたとしても、それに見合う働きはできないだろうから申し訳ない」
県内の各ハローワークには被災者向けの窓口が設置されているが、ハローワーク静岡と同浜松によると、被災者を優先的に雇用する内容の求人はない。静岡労働局職業安定課は「県内で仕事を探している被災者がいるかを4月中にとりまとめたい。でも被災者のニーズに合う雇用をどれだけ開拓できるか」と話し、企業の協力に頼らざるを得ないのが現状だ。
政府は5日、「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」を設置し、被災者向けの緊急雇用創出事業の財源として、全国に4500億円を交付する対策を打ち出した。
静岡県雇用推進課は「県内で就業を考えている避難者の数を調査し、市町と連携しながら緊急雇用創出事業の準備を進めたい」と話した。
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