2011/04/11
家具職人 田中千晴さん(32)=高山市
高山市の家具メーカー「飛騨産業」に入社して7年。木の香りが充満する工場で、オーダーメードの図面から製品を仕上げる特注課で汗を流す。
カタログに載っていない家具をどうすれば形になるかを考えながら作っていく。思いも寄らない図面が出てくることもあるが、経験を積んだ職人が集まれば必ず解決方法が生まれ形になるという。「先輩の職人はどの道具を使えば早くできるかの見極めが早い。私はまだ職人まで行ってない。何が来ても『分った。やっとく』とさらりと言えるようになりたい」
長崎県で生まれ育ち、島根大総合理工学部へ進学。石こうと木片の複合材「石こうパーティクルボード」を研究したが、自分の手で作る道に進みたいと卒業後、京都の伝統工芸専門学校に入り、京指し物を選んだ。
職人に弟子入りし伝統工芸を継いで行くことも考えた。しかし、数日間で家具をラインに乗せて作る機械加工に興味を持ち、求人情報サイト「リクナビ」に登録し、高山が家具で有名だという事を知らないまま、飛騨産業の入社試験を受けた。「自然にある材料だけで、自然に返っていくものを作りたいと思った。指し物は自然にある板を削ってにかわで接着する。山に置いても自然と分解することに魅力を感じた」
「家具がこれだけ地域に根付いてることに驚いた。会社の家具を使っているお店やお客さんがたくさんいる。飛騨の家具を担ってるという思いもある。木に携わる仕事が一生できればいい。木の匂いが自分に似合ってると思う」
飛騨産業の製品で目に留まったのは、木の節をデザインに取り入れた家具シリーズ「森のことば」。家具業界の常識では節は見た目が悪く、製造段階で狂いも多い。それを見た瞬間、ありえないと思った。が、一方で「面白いかもしれない」「新しいことなのかも」という印象を持った。
昨年、同僚と結婚した。休日には趣味で小物や棚を作る。その中で「昔の人はどうやって作ったんだろう」と思うと、資料を探して作り方を調べてみる。それは、職人としての感覚を研ぎ澄ますことにもつながっていく。「100円ショップを見ると品ぞろえがすごい。これにも勝たないといけないと思うと…。100円の価値を感じるが、高い家具にもお金を出してくれる人がいる。その価に見合う仕事をしないといけない」(白山泉)
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