中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【経済】内定取り消し173人に 震災影響で、厚労省集計

2011/04/08

 東日本大震災による大津波は、若者たちの就職先も流し去った。空前の就職氷河期を乗り越え、つかみ取った内定。「自宅も勤める会社もなくなった」。避難先で若者たちが途方に暮れている。

厚生労働省は8日、東日本大震災の影響で内定が取り消された学生、生徒は173人となり、入社延期となったのは1051人と発表。「今後も増えていくだろう」としている。

 岩手県釜石市の県立高校を卒業した市内の女性(18)は地元の食品卸会社への就職が2月末に決まったばかりだった。家族は無事だったが、家は流された。会社の建物は倒壊しておらず「地元に不可欠だし、つぶれることはない」と楽観していた。

 一週間後、避難先の中学校で、母校の教員が手にしていたメモを偶然見た。就職先の社名と「全員解雇」と記されていた。ショックは受けたが「周りはがれきの山。しょうがないと思った」。

 今は盛岡市の旅館で両親ら5人と避難所生活。パソコンもスーツも携帯電話もない。「企業に応募しても、『住所もないのにどうやって通うの』と言われてしまうのでは」と疲れた表情を浮かべた。

 宮城県南三陸町の県立志津川高校卒業生の男性(18)は地元の造船所に就職が決まっていた。「遠くから見ても会社がなくなっているが分った」。自宅も流され、親戚宅に避難する。

 造船所から連絡はなく、自分からも連絡していない。「津波ですべてがなくなった。町を出るのか、残るのか。これからのことは考えられない」と胸の内を明かす。

 被災した宮城県気仙沼市のハローワーク気仙沼は震災後、市役所に移り臨時相談窓口を設置。被災者が詰め掛ける。「市内に本社を置く会社の大半が従業員を解雇する見込み」(担当者)で、新卒者を採用する余裕はない。

 ◇ ◇ ◇

 厚労省によると、内定取り消しをしたのは計39事業所で、地域別では企業の本社が集中する東京が71人(3月末に比べ8人増)で最多。震災の被害が大きい東北3県では岩手47人(同23人増)、宮城20人(7人増)、福島8人(1人増)だった。全体の3分の2に当たる110人が高校生。

 国は、被災して内定を取り消された既卒者対策として、全国のハローワークに相談窓口を設置したり、卒業後3年以内の人を雇用した企業への奨励金を増額したりしている。