2011/02/24
携帯電話でできるとうたった内職でのトラブルが後を絶たない。高額のホームページ(HP)作成料を払わされた事例を一月十三日付で報道したところ、「求人チラシを見て応募し二百万円余りの被害に遭った」という女性の声が生活部に寄せられた。仕事を始める前に多額の金を請求する業者には注意が必要だ。 (稲田雅文)
愛知県の四十代女性は昨年十二月中旬、新聞に折り込まれた求人チラシの広告を見て業者に電話した。三人の子どもを育てる母子家庭。「時給千五百円以上、一日三十分からOKの在宅ワーク」との宣伝文句に魅力を感じた。
業者は「ネットの店舗で問い合わせに答える仕事だ」と説明。一日に数件のメールに返信する簡単な作業をアルバイトで始めた。業者は、給料として二千円を振り込んできた。
こうした仕事を三、四日ほど続けたところ、業者から「HPを作って本格的に仕事をしないか」と誘われた。作成料三十六万円が必要だという。「一カ月で元が取れる。収入がなければ返金する」との言葉を信じて契約。お金を振り込んだ。ところが、HPを作った後、今度は「客がついてきた。HPを更新すれば収入が増える」と言って百万円を要求してきた。
「客の問い合わせに答えられず迷惑している。こちらは既にHPの制作に六百万円をかけた」などと高圧的に迫られた。不審に思ったものの勢いに押され、百万円を二回、計二百万円を払った。業者から振り込まれる金額も多くなったが、「残り四百万円を支払え」と脅されるようになり、悩んだ末に警察に相談した。
結局、業者から払われた報酬は約十二万円ほど。女性は「三人の子の教育資金の蓄えを全部、失ってしまった」と嘆く。
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記者は広告に記載された業者の所在地(東京都渋谷区)に行った。八階建てのビルがあったが、業者の名は見つからなかった。この住所で法人登記もしておらず、実体のない会社と分かった。
被害の入り口となった求人チラシ。時給七百五十円ほどの事務のアルバイトや接客スタッフなどを募集する地元企業や店舗の広告が並ぶ中、ネット関連の業務で千五百円の高時給をうたうこの業者の広告は異質だ。
広告の内容はチェックしているのか。チラシを発行した愛知県内の会社の経営者によると、この広告は関東地方の広告会社から「広告の内容は責任を持つ」として掲載を依頼されたといい、内容はチェックしなかった。
この関東地方の広告会社に取材すると「うちも都内の広告会社から依頼された」という。都内の広告会社に電話すると、代表者だという男性が業者の依頼を受けたことを認め「数が多く業務内容のチェックまではしていない。被害が出たと初めて聞いた。これからは調べたい」と語った。
ところが、新宿区にあるこの広告会社の住所を訪ねると、五階建てのビルがあったが、この広告会社名の表示はない。ビル所有者も「この会社名は聞いたことがない」。広告会社の代表者名で借りられている部屋はあったが、不在。会社の実体は確認できなかった。
求人チラシなどを発行する会社でつくる全国求人情報協会によると、新規に掲載申し込みがあった場合は、訪問するなどして業務内容を調査するとする自主基準がある。
問題のチラシを発行した会社は同協会に入っていない。最初に申し込みを受けた広告会社がチェックしなければ、悪質業者の広告の掲載は避けられそうにない。
国民生活センター相談部の担当者は「仕事より先にお金を払わなければならないような業者との契約は慎重に」と呼び掛けている。
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