2011/02/23
谷川洋さんはNPO法人「アジア教育友好協会」(AEFA、東京都港区)の理事長を務めている。
常勤四人で寄付金を集め、タイ、ラオス、ベトナムなどの教育環境の整備が遅れた少数民族地区で、小学校の校舎を民間援助として建てている。
「昨年十二月もベトナムを訪れ、建設した十八校を二週間にわたって見て回り、新たな建設候補地を調べてきた」
元商社マン。大手商社で主に鉄鋼を扱い、海外駐在も経験した。六十歳で定年退職したとき、ある財団から途上国で学校建設に協力するNPOを設立しないかと誘われた。
「学校建設のノウハウはまったくなかった」。とりあえず自宅に任意団体を立ち上げた。ラオスなど現地を視察すると援助する難しさを感じた。
「学校というハコモノは援助で建ったが、いつの間にか打ち捨てられた学校が予想以上に多かった。学校運営は地元住民を中心にしなければならないことを学んだ」
二〇〇五年、第一号としてベトナム中部の電気のない山村に、三教室、トイレ、井戸を備えた小学校を完成させた。それ以来、これまでに各国で計九十六校を建ててきた。多くは木造で三、四教室、児童数八十~二百人規模の校舎だ。一教室あたりの建設コストは約一万ドル(約八十四万円)ほどという。
学校の建設や維持管理は地元住民が中心になってもらうため、裏方に徹する。「学校が完成すると、村を挙げてお祭りのような開校式が開かれるが、私たちは式にはできるだけ出席しない」。しかし、維持管理のため、何度も足を運ぶ。
時には建設場所などで地元の行政担当者と対立することがある。そこは商社時代に培った交渉術やプレゼンテーション力で理解を得る。
学校同士の交流も進めている。福島県のある小学校は、ラオスの山村にある相手校に楽器がなく、音楽の授業がないことを知り、使わなくなったリコーダーや鍵盤ハーモニカを集めて贈った。それを使って相手校で音楽の授業が始まった。交流を行った日本の小学校は延べ七十二校になる。
組織はNPO法人となり、昨年三月から寄付金控除を受けられるようにもなった。「シニア世代の人から二十万~五十万円の寄付をいただくことが多い。ありがたい」。寄付は増え続け、昨年の年間活動予算は約一億二千万円になった。
「住民中心という基本方針を忘れないよう、自分たちの活動や組織に外部の目を入れるため、十四人に無報酬の顧問をお願いしている。途上国の相手と心が通じ合い、感謝されるとうれしい」 (草間俊介)
◆若い世代へ 社会経験は必要だ
若い人で海外援助の現場で働きたいという人が増えている。ただ、大学を出てすぐに援助の現場に入るのではなく、社会経験を積んでから始めた方がいい。私たちは日本の社会に乗って(立脚して)活動しているので、社会経験は必要だ。私も商社勤務時代に学んだノウハウや経験が役に立っている。私たちは情報公開に努め、活動内容や実績、支援の方法などは協会のHP(協会名で検索)で公開しているので、ぜひそれを見てほしい。
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