2011/01/18
県内の若者を取り巻く雇用環境は依然として厳しい。総務省の労働力調査(2009年)では、年間145万人が会社都合で離職しているという。「ものづくり」の街への希望を抱き、看護・介護で期待されて来日した外国人にも雇用の“逆風”は容赦ない。働くことの先行きは明るくない。それでも、へこたれない人はいる。働く人の現場に迫った。
◆支える教員も激務
昨年師走の浜松商業高校(浜松市中区)の進路指導室。生徒たちの進路を担当する教員の鈴木泰彦さん(57)は、ハローワークに提出する資料に目を通していた。生徒の就職状況を記した1枚の紙。就職希望者のうち、3人の就職が決まらず、先生の表情に疲れがにじんでいた。「これでも一昨年よりは、ましですよ。年末までに7人が就職が決まってなかったんですから」。
鈴木さんはこれまで勤務していた高校を合わせれば、進路指導は20年にわたるベテラン。だが、「10年前の就職氷河期に輪を掛けて今回はひどい。これまでは10月末には就職がほとんど決まっていたのに」と直面する厳しさを明かす。
県内の今春卒業予定者の就職内定率(昨年11月末)は、大学生が55・4%、短大生が44・9%、高校生が76・7%と、若者を取り巻く雇用環境はなかなか改善しない。
2008年秋の世界的な金融危機以降、企業の採用抑制が加速、雇用の悪化に歯止めがかからない。就職できないまま卒業する生徒も多く、社会問題にもなっている。生徒の進路を手助けをする教員にも大きな負担となっている。
金融危機前は400人もあった地元伝統校・浜松商業高の求人数は今や、その半数にも満たない155人だ。就職を決める生徒よりも、やむなく進学の道を選択する生徒の方が多くなった。
ただ、家庭の経済的な理由で、進学したくても進学できない生徒も少なくない。簡単に進学を勧めることができないもどかしさも抱える。
鈴木さんは「人材を発掘するためにかつては学校にわざわざ出向いてくれた企業も多く、求人も至れり尽くせりだった。リーマン・ショックを境にそれが逆転してしまった。頭を下げることも多くなりました」と明かす。
鈴木さんら浜商の就職担当の教員は昨年5月末から企業への訪問を開始。これまで管理職の教員であれば、大手を中心に数社の訪問でよかった。今は管理職も中小に出向き、遮二無二、内定をお願いせざるを得ない。訪れた企業は前年よりも3割増えていた。
“懇意”にしていた企業の雇用も揺らぐ。「浜商の生徒を優先的に採用してくれた企業にも、ほかの高校が押し寄せ、競争が激しくなった。もはや『聖域』はなくなってしまいました。教員にとっても、神経戦ですよ」と、薄明かりのともる進路指導室で、鈴木さんは力なくつぶやいた。 (神野光伸、写真も)
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