2011/01/19
活気づく専門学校
1月中旬、浜松市中区にある学校の教室は熱気にあふれていた。「(江戸時代の儒学者)青木昆陽がサツマイモに注目した背景は…」。講師の話に聞き入る生徒が向かうのは、間近に迫る大学受験ではなく、今秋の公務員試験。大原法律公務員専門学校の浜松校で生徒が学ぶ一般教養は、日本史など10科目以上にも及ぶ。
不景気になると公務員人気が高まる。こうした言葉を裏付けるように、同校学園企画広報部の松浦朗人部長は「ここ数年、定員いっぱいです」と話す。
生徒数は、2002~04年にかけて80人で定員が埋まる。それが、05~08年には65人と減った。リーマン・ショックで地域経済も大きな影響を受けた09、10年は再び増え、定員いっぱいとなった。
公務員人気の背景について、県西部地域しんきん経済研究所の間淵公彦主席研究員は、「不況になると安定志向が強くなる」と分析。併せて「民間の求人が少ないことも理由にある」と指摘した。
不況で、ヤマハ発動機など大手でもリストラが行われるが、公務員に人員整理はない。賃金も悪くない。例えば、浜松市職員の給料の算定基準となっているのは、市内の「50人以上」の民間事業所。平均月37万円と“高い”。県の毎月勤労統計調査年速報を見ると、5人以上の事業所の平均は30万7415円で、30人以上は34万1973円。一概には言えないが、企業の規模が大きくなるほど給料は上がる。
だが、安定志向だけでは試験に受からない。同校で学んで昨秋に公務員試験に合格、この4月から県警で働く池上寛之亮さん(22)=浜松市北区出身=は「専門学校の生徒は意識が高い」とも話す。
池上さんは高校卒業後、エレベーターのメンテナンス会社に就職。給料、同僚に恵まれたが、昨年3月末に仕事を辞めて、試験に挑んだ。
大企業でもリストラ風が吹き荒れ、就職戦線は激化。公務員試験に失敗したら無職の恐れが強かった。だが「一度しかない人生。後悔はしたくなかった。踏ん切りをつけようと専門学校への入学を決めた」。勉強は1日10時間に及び、半年で試験に合格した。高い集中力の持ち主だ。
浜松校の公務員試験合格率は一次試験で9割以上、二次も7~8割と高い。その理由は、面接重視の試験に対応するため公務員OBや社会人など常勤講師を充実させているからだ。
松浦部長は「しつけにも相当力を入れている」と明かす。部屋に入るときのノックの仕方やあいさつなども徹底して教える。大学にこだわらなければ誰でもが入学できる時代。大卒の内定率が最低の中、公務員人気を背景に生徒数確保をもくろむ専門学校側の“思惑”も垣間見える。 (有川正俊、写真も)
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