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【流儀あり】オンリーワンが生命線 フタバ化学・志水双葉社長

2011/01/20

 旅館やスーパー銭湯向けの液体ボディーソープを作っています。ボトル入りのボディーソープを日本で初めて売り出したのが、わが社です。せっけんに新たな付加価値を付けようということで。1987年のことでした。当時、フランス製の乳液は小さな瓶でポンプが付いていた。同じ物を10倍の大きさでできたら、とメーカーと共同開発を始めたけど、失敗の連続でした。

 精密な金型が必要だったんですね。ポンプを押すと、ピュッとソープが出ないといけないんですが、弁が難しかった。これが正確に作動しないと、カスンとなって、うまくいかない。ベアリングの玉ではどうか、と試行錯誤の繰り返しで、ものすごく高価なポンプになってしまいました。結局欧州の輸入品の方が安いとも言われましたけど、それでも、最初に取り組んだので、実は良かったんです。

 というのも、まずゴルフ場のお風呂を中心に売り込みを始めました。経営者が集まるから効率が良いと思って。でも、反応はいまひとつ。家庭用でも営業しましたが、ある時、実際に自宅で使った旅館のオーナーさんが「これをうちの大浴場に入れたい」と。そこから一気に旅館業界に広がったんです。一時はシェア4割ぐらいになりました。置いてある固形せっけんについた他人の髪の毛が不潔に感じるとか、衛生意識の高まりも追い風になったと思います。

 ただ、大手が類似商品を出して追い付いてくるので、なかなか難しい。大手との価格競争で、差別化をどうするかに必死でした。

 その後の塩サウナブームでは、マッサージ効果があるということで、ボディーソープにつぶ塩を混ぜる「アロエシオ」という商品を開発しました。液体の中に塩を偏りなく安定的に混ぜるのは難しいんですが、そこを研究して。塩で設備がさびることもあるので、大手は手を出しにくいんですよね。

 ここ数年、観光業界は厳しい。皆さん、競争でおもてなしの差別化を模索されている。そこで、その旅館のためだけのソープづくりを請け負うようになったんです。大手にはまねのできない少量からの開発、生産に取り組みました。

 例えば、山形県内のある旅館からは地元産のベニバナを使ったソープ生産を提案されました。そうすると、地元農協とのつながりも生まれます。九州ではカボス。お土産としての販売も期待できます。

 最近、自動車部品メーカーから油のついた手を洗うための液体せっけんを求められました。工場で塩は使えないので、クルミの殻を砕いたスクラブ成分を採用しました。こうした、さまざまなニーズに細かく対応したオンリーワンブランド商品が今後の生命線になると思います。

  聞き手・斉場保伸

  写 真・伊藤 遼

【しみず・ふたば】高校卒業後、フタバ化学入社。営業、企画部門などを経て、名古屋工場統括責任者に。03年、創業者である父、志水徹男氏の死去に伴い、社長に就任。名前は会社名をそのまま授かったという。愛知県化粧品工業協同組合理事、日本石鹸(せっけん)洗剤工業組合理事。名古屋市中区出身。59歳。

フタバ化学・志水双葉社長
フタバ化学・志水双葉社長