2011/01/18
ヒートアイランド現象など、厳しい都市の環境を改善するためビルの屋上を植物で覆う「屋上緑化」。さまざまな建造物での導入が広がる中、コケを利用した屋上緑化用シート「モスグラス」の売り上げを伸ばしているのが、丸中ゴム工業(名古屋市瑞穂区)だ。フォークリフトのタイヤを取り扱ってきた会社にとって新たな挑戦となっている。
「今年は売り上げ3倍増を計画している」と話すのは、同社モスグラス事業部の虻川淳悟課長(32)。同社がこの事業に本格的に取り組んだ2007年のシートの販売面積は約160平方メートル。これが10年には3千600平方メートルまで拡大し、さらに11年は1万平方メートルの販売を見込む。
この1センチほどの厚さのシートの構造は独特だ。子会社で製造する不織布を何層にも積み重ね、スナゴケ(モス)と人工芝(グラス)を織り込むように植えつけている。このスナゴケが光合成で大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、成長するという仕組みだ。保水力もあることから、気化熱で熱を下げる効果もある。1平方メートル当たりの重さは乾燥時約2キロ、水を含むと12キロ程度にもなる。
もともと積水樹脂が新たな緑化資材として開発していた技術だった。しかし、大手樹脂メーカーとして、生物であるコケを扱うことに対する難しさがネックにとなり、売却の対象に。一方の丸中ゴムは、環境対応の新しい事業分野を開拓しようと試行錯誤をしていたことを背景に、06年、この事業に取り組むことになった。虻川課長は「面白そうだった。コケという生き物を努力次第で安定した品質の工業製品のように扱えるのではないかと思った」と振り返る。本格展開に向け、08年、自動車の内装などに使われる不織布メーカーのサンアッド(岐阜県穂積市)を買収した。
改善点は多かった。それまで接着剤でシートに貼り付けていたコケを、不織布に織り込む構造にすることで、生育しやすい構造に。さらに、排水機能を高めることで、枯れにくい工夫を施した。
これまでの納入実績は、官公庁や病院、企業の屋上や個人宅だ。だが、施設工場にも新たな展開が。昨年秋には大手飲料メーカーが試験的に東京都内の自動販売機の“屋上”緑化に導入。真夏に冷却効率の向上が見込め、電気代の節約になると、今後全国的に拡大する方針を示す。
虻川課長は「土を盛って屋上緑化するのに比べて、シートは軽いをいう特徴がある。メンテナンスの負担も軽く、利用する場面は広がるのではないか」と話している。
(斉場保伸)
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