2011/02/13
「携帯電話で好きな時間にできる」として集めた在宅アルバイトに、仕事に必要だとして高額なホームページ作成料を請求する業者とのトラブルが相次いでいる。従来の「内職商法」と似た手口で、まともな収入が得られないケースがほとんどだ。 (稲田雅文)
滋賀県の三十代女性は昨年十月中旬、新聞に折り込まれた求人情報紙で「携帯ひとつで仕事ができる」「時給千四百五十円以上」などとうたう業者の広告を見つけた。
携帯電話から業者のホームページにアクセス。住所や氏名、電話番号などを入力し応募した。数日後に業者から電話があり「コミュニティーサイトで客の問い合わせに答える仕事」と説明された。履歴書をファクスで送ると後日、採用された。
その直後、業者は登録代などとして三十八万円の支払いを要求。女性は拒否したが「一カ月で元は取れる」と業者は食い下がった。仕事に使うホームページを作り始めたと言われたため断りづらくなった女性は、預金口座にあった手持ち資金の全額十四万円を振り込んだ。
業者は足りない費用を作る方法として、クレジットカードのショッピング枠を現金化する業者を紹介してきた。女性はこうした手法がカード会員の規約違反になるとは知らず、言われるまま現金化業者に電話。カードで計十六万円を工面し、支払いに回した。
「作成した」とするページは出会い系サイトのような外観で、ほとんど内容がない。まだ何も仕事をしていないのに、業者は「すでにホームページにアクセスしている人がいる」などと、二日間で計約二万六千円を女性の口座に振り込んできた。不安が募った女性は、クーリングオフによる契約解除を業者に通知した。
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埼玉県は昨年十二月二十二日、こうした商法が特定商取引法で禁止する誇大広告などに当たるとして、東京都内に登記上の所在地がある「アウトレット」「トラスティ」の二社に、同月二十三日から三カ月間の業務停止命令を出した。同県への相談者の多くは、子育て中の三十代の女性だった。
県の担当者によると、両社の所在地は住所を貸したり郵便物を取り次いだりする「バーチャルオフィス」と呼ばれる業者の事務所にあり、電話はつながるものの実態を確認することはできなかったという。
国民生活センターによると、こうした携帯による内職商法のトラブルは昨年三月ごろから目立ち始め、十一月二十日までに全国で二百三十一件の相談があった。業者名は複数あり、新聞折り込みやタウン誌などに求人広告を掲載。未経験者でも自宅で簡単にでき、千五百円程度の時給が得られるとうたう。応募するとサイト作成料名目で約四十万円を請求される。
履歴書などを送らせて、断りにくくするのが手口だ。手続きで免許証のコピーをファクスした宮城県の二十代男性は、サイト作成料の支払いを断ったところ「個人情報を得ているので何でもできる」と脅されたという。
金がないと断ると、クレジットカードを不正利用して現金化する業者を紹介されたり、消費者金融で借りさせられたりする。払った後も「システムのバージョンアップに必要」「集客に必要」などと繰り返し費用を請求されるケースが多く、中には八百万円もの被害に遭った人もいる。
滋賀の女性の事例のように、当初は数万円の報酬が振り込まれても、ほとんどの場合、説明された収入は入らない。女性は解約で二十四万円が返金されたが、クレジットカード会社からは、二十万円余りの請求を受けた。
同センターは「返金を求めても難航しているケースが多い。安易に契約しないでほしい」と呼び掛けている。
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